ここ近年、海外ではヒップホップブーム、R&Bブームが巻き起こり、ヒットチャートを大いに賑わせている。また日本では、米津玄師のような新世代の音楽が若者を中心に盛り上がっている。
しかし個人的には音楽的な素材、フォーマットとしてここ最近、大きな変化が起こっているかと言われれば、そんな感じはしない。50年代のロックンロール黎明期や60年代のビートルズ、レッドツェッペリン、ザ・フーのような音楽的革命や70年代のソウルミュージックの一般化などに比べると、音楽そのもののフォーマットが大きな変革が起こっているとは、近年感じ得ない。
80年代後期になると、サンプリング手法が生まれてきた。従来のフォーマットを組み合わせ、新たな音像を作りあげる、というこの手法は、これはこれで音楽の新たな革命と言わざるを得ない。
90年代は、50年代から続くロックンロールの変遷を総まとめした面白い時代だった。いわゆるオルタナティヴの時代である。ローファイのフォークロックや、プログレを進化させたロックミュージック、サンプリングを大胆にロックに変化させたインダストリアルミュージックなど、これまでの20世紀のロックミュージックを総決算した10年だ。
現在も、この90年代の音楽的なアプローチが主流となっている。ただ時代的な背景かもしれないが、90年代の退廃的なアプローチをするのではなく、最近は、刹那的享楽を音にするアプローチに現在は変化をしているようだ。最近の主流のコード進行としては、80年代の楽曲群に近いのではないだろうか。 サブスクリクションが流行ったことで、曲自体のインパクトを残したい、というミュージシャンの意思もあるのかもしれない。
今回は、20世紀総まとめ時代だった90年代の名盤達を紹介したい。音の古さ、などはあまり感じることはないだろう。それよりも時代に流れる諦念の空気感を強く感じるような作品が多いかもしれない。
1.NEVER MIND /NIRVANA
言わずもがなの名盤。極めてシンプルなこのハードロックの一枚が、グランジを生み、90年代のロックの歴史を変えた。今、聴いてみると、本当に「ありそうでなかった」音楽だと感じる。この「ありそうでなかった」ものこそが発明だと感じる。
2.O.K.COMPUTER/RADIO HEAD
レディオヘッドは、この後も名盤を連発しているが、やはり強烈な印象を残したのはこの作品だろう。
3.ODELAY/BECK
90年代のサンプリング手法と様々な音楽ジャンルを取り入れたベックの名盤。とにかく玉手箱のように色々な音楽を体験できる。
4.LOVELESS/My Bloody Valentine
轟音ギターと美しいメロディが印象的なマイブラのセカンドアルバム。ギターのディストーションノイズだけで作る音像は、ひとつの芸術作品といえる。
5.The Downward Spiral/Nine Inch Nails
ナインチネイルズのセカンドアルバム。激しく暴力的な音が印象的だが、時折流れるピアノの美しさ、そして曲のメロディが素晴らしい。近年、よくトレンドレズナーがサントラを手掛けるのも頷ける。
6.Blood Sugar Sex Magik/Red Hot Chili Peppers
レッチリのなかでも最高傑作と言われることの多い90年代の初期の名盤。なによりも演奏のグルーヴ感が素晴らしい。ジョンフルシアンテのギターが冴える。
7.〈What's the Story〉Morning Glory?/OASIS
90年代で一番話題を振りまき、そして世界を熱狂させたバンド、オアシス。このセカンドアルバムは、全曲名曲だ。当時のブリットポップを代表する世界で売れに売れた一枚
8.Automatic for the People/R.E.M
R.E.Mというバンド名を今の20代の若者は知らないかもしれない。しかし当時、彼らは世界一重要なバンドと言われていた。長いキャリアのなかで、最も評価の高いのが本作だ。90年代のアメリカのオルタナティヴを代表する一作。
9.Richard D. James Album/Aphex Twin
テクノというジャンルを刷新し続けるエイフェックスツインの名盤。とにかく最初の一曲目の地鳴りのようなドラムベースと限りなく綺麗なメロディに心が奪われるテクノクラシックの一枚。
10.Screamadelica/Primal Scream
90年代の音楽シーンを代表するプライマルの3rdアルバム。当時、セカンドサマーオブラブといわれるムーヴメント(クラブでお薬を食べるブーム)が起こっていたが、それを象徴する一枚。後半に進むにつれ、だんだんと恍惚感に浸れる名盤。
11.second toughest in the infants/Underworld
ダレンエマーソン在籍時の絶頂期のアルバム。この当時、トレインスポッティングなどのサントラなどを手掛け、一躍クラブミュージックを席巻していた。
12.XO/Elliott Smith
若くして命を絶ったエリオットスミスの名盤。凛とした佇まいのフォークロック。どの曲もとても美しい。秋に聞きたい名盤。
13.Urban Hymns/the vervn
名曲ビタースィートシンフォニーを筆頭にどれも良質な曲で集められたヴァーヴのアルバム。90年代後期のUKロックを代表する名盤だ。
14.Rage Against the Machine/Rage Against the Machine
ミクスチャーロックの代表格レイジの1stアルバム。これを聴くと97年のフジロックを思い出してしまう。音塊が押し寄せるような迫力は今聴いてもカッコいい。
15.Exit Planet Dust/The Chemical Brothers
当時のクラブシーンで流行りに流行ったケミカルブラザーズの1stアルバム。今や息の長いテクノユニットととなった彼らだが、初期衝動全開のこのアルバムを聴くと、ここまで息長く続くとは思えなかった。
16.Weezer/Weezer
ざらついたメロディとアレンジが主流だった90年代中期に極上のメロディとギターサウンドで世間を驚かせたウィーザーの1stアルバム。純粋に本当に良い曲が多い。
17.Green Mind/Dinosaur JR
まさに90年代を象徴するかのようなオルタナティヴロックの名盤である。ギターの音やJの声を久しぶりに聴くと、一瞬で当時の時代にタイムスリップしてしまう。
18.BLUE LINES/massive attack
トリップポップといわれるジャンルを確立したマッシヴアタックのファーストアルバム。サウンドプロダクションが独特であり、まさに静と動を突き詰めた音楽だ。聴いていると闇に落ちていくような感覚に陥る。
19.The Fat of the Land/Prodigy
今やいろいろなテレビ番組の挿入曲で使われることも多いこのアルバムだが、久しぶりに聞くと変わらない攻撃性とそれを増幅させる曲の作り込みに唖然とさせられる。90年代後期のクラブミュージックを代表するアルバム
20.Second Coming/The Stone Roses
ストーンローゼズは、89年の1stアルバムのイメージがあるが、このセカンドアルバムもとても素晴らしいアルバムだ。特にジョンスクエアのギターとリズムの絡み合いは、本当にカッコ良い。
正直、もっと他に入れたいアーティスト、アルバムもたくさんある。パールジャムもスマパンも、マンサンも、ファットボーイスリムも入れたいが、ジャンルの網羅性を考えての20作にした。
今や全てサブスクでダウンロード可能である。なんて便利な時代だ。また、こうして90年代のロックミュージックを振り返ると、この多岐性に驚く。まだまだインターネットなんて一般化されていない時代だ。不特定多数を狙う重要性もわかるが、最小公約数を狙う彼らのロック魂に敬意を払いたい。
世界が嫌になったらこの20作を聞いてみてください。
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