2019年の不動産業界の動き

 あっという間に年の瀬である。もう残すところ数日で2019年も終わる。今年は個人的にもなかなか忙しい日々が続いたが、それなりに充実していたように思う。暇よりは、多少忙しいほうが、良い。しかしながら、あまりに忙しすぎるのも、それはそれで問題だ。このあたりのバランスが本当に難しいところだ。
 ちなみに今日はクリスマスイブである。毎年のことながら、今年も風邪をひいてしまった私は、喉をやられてしまって、あまり声を出すことができない。掠れ声でかなりセクシーな声になっているが、いかんせん喋ることができないので、そのセクシーさを誰にもアピールすることができない。

 さて、2019年、不動産業界はどのようなことが起こったのだろうか。私の仕事は、8割がた不動産会社さんとの仕事である。細かい数値の分析や経済状況は、それなりの有識者の皆様がするとして、あくまで現場でどのようなことが起こっていたのかを軽く纏めてみたい。

 まず不動産賃貸業。まず空室状況に関しては、都心でいえば今年も好調も好調。空前の好景気である。相変わらず都心への人口の流入は増え続けている。しかしながらあくまで感覚的なところだが、意外と超都心の物件は空室期間が長くなっているような気がする。強気な賃料設定が少しだけ、市場と乖離しているようだ。とはいえ、それはあくまで現在のところ、一部の問題であり、市場全体に大きな影響を及ぼすことはないだろう。

 また今年はなんといっても賃貸市場は、OYOの話題で尽きなかった。表現の仕方が難しいが、まるで台風のように今年の上半期に市場に現れ、そして去っていった。当初、かなり市場全体で話題になったが、後半になるにつれ、別の意味で話題になった。
 あえて失敗、と表現するが、そもそもの失敗の要因はなんだったのだろう。
 本当にシンプルなところだが、そもそもの賃料設定が高過ぎ、またユーザーへのサービスレベルが低すぎ、不動産業界の入り込みかたが不味すぎる、という基本的にまず押さえないといけないところを全く押さえていなかったことが原因だったような気がする。
 所謂、プロパティマネジメントといわれる空室管理、物件管理の手法が、正直言ってあまりにも無知だったように思われる。そもそも不動産業界が遅れてる云々よりも、そもそもの業務と構造を理解していないまま進めてしまったことが原因の一端だったのかもしれない。
 ちなみにこれは他の不動産業界への新規参入の企業にも当てはまることである。外側から見ると、不動産業界はリテラシーが低い部分が往々にしてあることは否めない。しかしながら、これはやり取りする「ツール」の問題であって、日本の不動産市場の特に賃貸物件管理はかなり高品質である。このあたりを理解したうえで、参入していかなければ、なかなか市場浸透はできないだろう。不動産業界が「分かりにくい」のではなく、「複雑な構造で品質を担保しようとしている」ことを理解することがとても重要だ。

 また賃貸仲介業に関しては、今年も大きな変化はなかった。ひとつだけ言えることは、収益構造としては相当厳しくなっているのは間違いない。広告料もあまり出なくなり、仲介手数料もユーザーから割引されている。いろいろな自動化が進んではいるが、まだ一手間、人間が介在しているのが現状だ。今後は確実に賃貸仲介だけでは、個人の売上は立てることはできないだろう。あくまで、賃貸仲介はひとつの業務であり、賃貸管理、売買仲介、リフォーム知識等々複合的な知識向上が、スタッフには求められる。海外のエージェント型モデルにシフトするためには、このような総合的な業務知識レベルが必要になるかもしれない。今後は業務知識の横展開をどのように広げていくかが、スタッフの育成の指標になっていくかもしれない。

 また売買に関しては、特に投資、一棟投資はかなり厳しい状況が続いている。逆にこの10年間があまりにもザルだったのかもしれないが、とにかく銀行融資が厳しい。なんとか急場凌ぎで、地方案件などを地方銀行で融資を通し、売上をたてているのが現状だ。いっぽうのワンルーム投資は、相変わらず好調だ。唯一の問題は、新築がなかなか建てにくくなっているところであろうか。本当に市場では、職人の手が足りない。工務店などの廃業なども増加しているようなイメージだ。これが故に、工事費は過去最大級に値上がりしているような印象だ。

 中古流通に関しては、これからも中古リノベーションがより一般化されていくかと思う。今までは、築浅値段落ちの物件の購入が主流だったのだが、これからはより一層、リノベーション物件の流通が進んでいくような気がする。今後、リノベーション業者でも、工事のレベルやサービスレベルの差別化が図られるだろう。リノベーションだけで持ちはやされる時代は終わりを告げ、そのリノベーションの質が求められる時代になるかと思う。

 
 来年はいよいよ2020年、オリンピックイヤーである。この数年間、様々なところから2020年が節目の年だと言われている。はたして不動産市場はどうなるのだろうか、日本経済はどうなるのだろうか。
 何はともあれ大きな変化があっても、ビクともしないスキルを個々人が身に付けていかなければいけないだろう。