最近、業界内の巷で噂になっているのは、OYOというキーワードである。
「およ」「おーよ」?と呼ぶらしいこのキャッチーで、少し弱そうな言葉は、その言葉とは裏腹に革新的なサービスを発表した。
まずそのサービスの概要だが、
1.敷金、礼金、仲介手数料ゼロ
2.家具家電の導入物件
3.スマホからの入退室、申込管理
がサービスの概要だ。
しかしながら、この企業の一番の話題となっているのは、ヤフーとの提携、そしてソフトバンクが出資しているという点だ。そこには様々なスタートアップとは違う潤沢な資金とマーケティング力がある。
では、このサービスがはたして不動産業界を変えるのかどうか、少し検証してみたい。
1.サブリースモデルでの仕入れ力
物件を仕入れるためには、新築物件か中古物件の2軸しかない。一般的に考えられるものは、中古の空室の多い物件を低価格でサブリースしていくものだ。これは、空室リスクとオーナーのキャッシュバランスとの調整が必要だが、資金力が充分にあるが故にかなり強気に借り上げを図っていくことができる。
また仕入れ(物あげ)力はどうだろうか?おそらくオーナー直接物件(管理会社が入っていない物件)へ営業をしていくよりも、大手管理会社と協業を図り、長期空室での借り上げを行ったほうが浸透は早いのかもしれない。もしかしたら数ヶ月後に、提携のリリースが矢継ぎ早に発表されるかもしれない。
現在東京都内の賃貸稼働率はとても高い。仮にサブリースするならば、現賃料と同価格の金額のサブリースをしなければ、築浅の物件は仕入れることができないだろう。そう考えると、数を増やすのならば、空室難物件が対象となる可能性がある。
中古のみならず、新築の仕入れはどうだろうか?仕入れをして、物件を建設して、募集するのには仕込みの期間が必要になる。これはこれで数年先の事業展開として土地から仕入れる可能性もある。ただし、一般的に金融機関の不動産事業としての融資は現状かなり厳しい。そうすると、ソフトバンクのファンドが仕入れをするのか、またあくまで宿泊軸として金融期間仕入れを行うのかがネックとなる。
2.家具家電付き物件の収益モデル
家具家電付きの物件の特徴は、バルクで家電を安く仕入れ、賃料に上乗せする仕組みである。これは、実際、10年以上前から脈々と行われている不動産事業の戦略のひとつだ。
ただ、今回はそこにIOTなどのそこそこ先端の設備が入る。そこは明らかにブランディング戦略のひとつであり、特に目新しいものはないような気がする。実際のところ、IOT設備、WIFI設備などは、バルク購入すれば導入費はかなり安く仕入れることができるはずだ。
3.スマホからの入退室
スマホからの入退室というよりも、顧客のMA(マーケティングオートメーション)が重要になる。物件探しから決済まで、また契約まではありとあらゆるテックを導入するだろう。
物件探しや選定、プッシュなどはチャットポッド、契約はオンライン重説、決済はスマホ決済、など。また鍵などもこれも最新の設備を取り入れるに違いない。
実際、そこをワンストップのサービスで完結させるのはそこまで苦労はしないだろう。おそらく重要なのは、「物件の数」が担保できるまでの契約までのチャットツールなどかもしれない。
収益モデルとは?
細かい概要はわからないが、一般的に考えられるのは、サブリースの利ざやを取っていくモデルだろう。おそらく賃料は初期費用の分配、家具家電、その他設備の仕入れ費用の分配、さらに清掃管理などを含ませるため一般的に考えると、割高になるかもしれない。しかし、このあたりは市場競争だ。
最初の段階から潤沢な資金力でマーケットを面で取ることを最重視しているのであれば、採算を度外視して調達を行うかもしれない。
流行るのか?
実際、マンスリーなどの物件の状況を見ていると、割と長期契約者が多いことに気づく。
レオパレスなどもそうだが、マンスリーと言いながらも、4年間住み続ける人と沢山いる。数ヶ月の短期契約だと、対象者は法人の出張者などがターゲットになるかもしれない。
日本の住み替えに対する考え方は、日本独自のものだと思う。
日本には独特の地域社会と、滅私奉公的な働き方が根底にある。
結婚をし、子供ができた後、引っ越しを繰り返すのはこれはこれでとても大変だ。また仕事も定時出勤等の縛りがある以上、本来の大変革までは時間がかかりそうだ。
しかし、結婚までの独身期間のライフスタイルや若年層の住まいに対する意識は大きく変わりつつある。
このような意識変革に対して、しっかりとしたサービスと物件の選択権の自由を与えることで、住み替えに対する緩やかな変革は起こるかもしれない。
しかしながら、不動産はオーナー(所有者)との関係構築が非常に重要である。オーナーに対しての営業活動やリーチをどのように行うのかがこのサービスが浸透するかどうかの肝になる。
実のところ、不動産業界の覇者たちは過去、オーナーに対するリーチを良い意味でも悪い意味でもローラーで行っていた。そこに様々な問題が発生しているのも現状だが、エリア拡張、市場浸透は足で稼がないと困難だという現実の問題もある。このあたりをどのように進めていくのかは、非常に興味深い。
いずれにしても、今後、このOYOというサービスがどのように進展していくのかは、不動産業界の現状と未来を見るうえでとても重要になるだろう。
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