不動産業界へのコロナショックは?

 昨今のコロナウィルスの影響で、日本経済は大きな落ち込みを見せている。これからどのような経済状態になるのかわからないが、少なくとも今までのような企業活動では、多くの企業は市場に太刀打ちできなくなるだろう。様々な業界で、統廃合が進み日本経済全体が大きな変化を迎えるような気がする。

 最近、私の周辺企業でも、かなり企業活動が深刻に厳しい企業が増え始めている。不動産業界は、さておき、旅館業、観光業は本当に大変だ。いくら優秀な企業でもここまで想定の稼働率低下や顧客減を考えていた企業は少ないだろう。特に旅館業だと、最低想定稼働率を大きく下回り、キャッシュアウトのタイムリミットが迫っている企業が後を立たない。
 今後多くの民泊物件や旅館が売りに出されることになるだろう。そうするとまた新たなプレイヤーが生まれる。しかし今やその新たなプレイヤーを生み出せるであろう土壌が市場にないのが現状だ。

 ちなみに不動産業界はどうか。興味深いことに管理会社の稼働率はそこまで落ち込みはない。これは理由が2つあり、ひとつは都心部は流入者への需要過多になり、そもそも空室がないので、稼働率は低下していない。そしてもうひとつの理由として、とにかく入居者の物件の更新率がとても高く、あまり空室がない、というのが現状である。
 この繁忙期でも、都心部は過去最大の現空(現在空いてる物件)の少なさだ。紹介しようにも現在、内見できる物件が少なすぎる。これだと仲介の営業方法を変えていかなければいけない。
 いっぽうで、このコロナの影響で、いよいよオンラインの部屋紹介というのが業界内で浸透され始めている。不動産店舗に行かずとも、そして内見せずにとも部屋を申し込みができるサービスだ。大手をはじめ、多くの会社がオンライン紹介を導入している。
 しかしながら、意外とというか、部屋を探す時は、やはり自分の目で部屋を見たいというニーズは手堅くあることも同時に感じられる。特に引っ越さないといけない人たちは、やはりそうはいっても実際、現場に行き物件を見たいのが本音だろう。今後の情勢の変化もあるだろうが、特に大きな来店の落ち込みは今のところないようだ。ただ、現地、来店、オンラインなどとユーザーに様々な選択肢を提供できることは業界の今後にとっても良いことだろう。

 さて、賃貸とは別に売買仲介は、これはかなり厳しい現状になっている。まず新築戸建ては、部材がことごとくストップして工事に遅れが生じている。また中古物件の大型リフォームなどに使われる部材も仕入れができない状態だ。またユーザーに関してもかなり買いに関しては後ろ向きになっているようだ。これは増税の影響もあり、トドメにコロナが来たような気がする。
 また当然、投資に関しても、現在のところ、海外投資家たちの足が止まっている状態だ。ただし、コロナの規制が解除されると、値崩れした不動産を海外投資家が買い漁る可能性もある。さらにオリンピックが1年程度延期になると、言わずもがな、少し不動産市場(あくまで投資の側面から見ると)は活況化するかもしれない。

 不動産業界のみならず、どこの業界でも現時点では、市場の好材料は少ない。またまさに「先行き不透明」であることは間違いない。
 とにかくこういった状況化で必要なことは、まず生き残ること、である。生き残るというのは、とてもシンプルに言えば、キャッシュアウトしないことだ。そのためには、今までのコストを見直し、最小のコストと最大の知恵で売上を上げるしか方法はない。ありがたいことに、今や、知恵を出せば無料でできることは沢山ある。マーケティングも、ブランディングも、そしてサービス向上も、どのように知恵を駆使するかだ。金さえかければ、売上が上がる時代は本当に終わりを迎えようとしている。

 ただそうはいっても今後、この自力のキャッシュで生き残りができない企業があるだろう。そうした時、手前味噌ながら、株式譲渡、事業譲渡といった選択肢が取られる。そうすることで、事業は生き残り、人も程度はあれども、生き残ることができる。
そういった選択肢のカードを持っておくことも重要かと思う。
 しかしながら、時すでに遅し、ではこのカードは切れない。今のこのような状態だからこそ、改めて自社の企業価値を見直し、そしてそれを上げる努力を忘れてはならないだろう。