平成30年間の不動産市況を振り返る

 平成も来年で終わり、新しい時代が幕を開ける。元号も変わり、消費税も増税され、オリンピックも2020年に開催される。
 今後の日本の歴史の節目になる数年間になるだろう。それがどのような歴史的評価を受けるのかは、未来にならないとわからない。
 ただ、いずれにしても表面的にも数字的にも変わり目になるのは間違いない。

 この平成30年という時代は、どのような時代だったのだろうか?大きな事柄を見ると、震災やテロのような事象が起こったり、文化的な部分だと、アニメなどの世界的な進出などが挙げられるかもしれない。
 当然、一括りに30年というものを統括できるものではない。しかし、個人的な話をしてしまうと、私のようなアラフォーは10代前半から40歳まで、所謂、青春の真っ只中にいたので、もしかしたら他の世代のかたよりも楽しい思い出のほうが強いのかもしれない。
 逆に現在の60歳近いかたは、平成をどのように捉えているのか聞いてみたい気もする。
 また違った平成の見方があるだろう。

 さて、そんな30年間だが、では、不動産市況はどうだったのだろうか?

 まず、この30年間、不動産市場は大きく変わっている。もしかしたら株式市場よりも、派手に変わっているのかもしれない。

 さまざまな金融政策や、近隣諸外国の経済状況の変化、そして国内の人口などの問題が、30年かけて不動産市況を大きく変えた。これも良いことなのか、悪いことなのかはわからない。

 まず平成元年の平米あたりの土地値段を見てみると、48万5381円と驚異的な数字だ。これは完全にバブル時代の温床である。ここから数年間上昇し続け、平成4年にまさに崖から飛び降りるように急降下を始める。そして平成30年の平均価格は、平米あたり17万8034円。ちなみにここ最近は7年連続上昇。これはアベノミクスの金融緩和の影響だろう。 

 しかし、今年は、不動産市況には悪いニュースが多かった。まずスルガ銀行の不正融資問題。そして他の金融機関の同じ例などが発生し、事業投資案件に関しては、金融機関が引き締めを始めている。特に一棟投資に関しては、かなり厳しくなっている。

 また住宅ローン金利を30年間の推移で見てみると、平成元年は約6パーセント、現在は2.475パーセント。これも金利は平成3年の8.5パーセントを頂点に下落し続け、1996年平成8年からは一定となっている。
 こうしてみると、バブル期を超えて、現在不動産市況の乱高下は少なくなっている。

 では、30年間の市場のハイライトとしてどのような事柄があったのか。
 
 平成14年のJ REITの上場で不動産証券化が始まり、不動産市場は一般ユーザーにも大きく開かれた。そして、平成18年の不動産プチバブルがあった。しかしながらリーマンショックと共にこのブームは収束した。
 それから2013年、平成24年のアベノミクスの金融緩和が始まり、不動産投資は息を吹き返してきた。現在はデータ的にはあくまで堅調な市況と見えるのかもしれない。

 しかし、外的要因は当然、30年で大きく変わった。まず年齢の人口階層が大きく変わった。平成元年は35歳から39歳の層が人口の割合だったのに対して、2017年にはそれがスライドし、70から74歳の層の人口割合がトップになっている。また少子化が進んでおり、人口減少が進んでいる。

  また昨今の不動産市況を見ていくと、いくつかのキーとなるものが出てきている。
 まずなんといっても「インバウド」だろう。訪日外国人の数は増加し続けている。民泊、また外国人をどのように受け入れるかが鍵となる。

 また、テクノロジーによるアプリ開発からの不動産小口投資もどれだけ大衆化できるか重要になる。分散投資として、不動産証券の手法をどのように取り組んでいくかは、不動産テックの大きな宿題である。

 そして富裕層高齢者の投資先としての不動産ニーズの開拓もでてくる。タンス預金をどのように不動産案件に回していくのかが鍵となる。

 そして国内の投資家だけではなく、外国人投資家、特に中国人投資家の動向も大きく注目したいところだ。
 彼らの不動産熱は冷めていない。政治情勢の懸念やリスクヘッジを考えた時に日本の不動産はやはりおいしいものであるかもしれない。


 懸念できるところとしては、地方をはじめとした人口減少と、また空き家の問題だ。

 住宅数だけをみると、増加を続けているのであきらかに供給過多になっている。では、投資価値がないわけではなく、やはり市場価値の高い物件は当然あり、このあたりの不動産格差が始まるのかもしれない。

 よく知られているように欧米では貧富の差はどんどん広がっている。もしかしたら今後はエリアの格差が激しくなり、人がいるところ、つまり不動産市場性が高いところは値上がりを続け、市場性が低いところは、とことん下がり続けるのかもしれない。そう考えると、地方の取り組みは、かなりダイナミックな施策を打たなければいけないだろう。
 投資価値がない地方都市は、大きな差をこれからの数年でつけられ、もう追いつくことができないかもしれない。
  
  はたして、これから新元号になり、オリンピックが始まり不動産市況はどうなるのだろうか?

 少なくとも30年後は、誰もわからない。ひとつだけ言えるのは、昔も今も、不動産投資というのは、ミドルリスクミドルリターンであること。そしてそれはさまざまな情勢に左右されるということだ。
 このあたりを冷静な目で見ていかなければいけないだろう。
 




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