2009年から2010年ごろ、今から10年程前、私は30歳を少し超えたあたりの年齢だった。当時、リーマンショックの影響もあり、世の中はどんよりとした重苦しい空気感に襲われていた。なにせ当時は、未曾有の大不況で多くの企業が破綻し、金融システムは限界を迎え、経済社会の根本的なところが揺さぶられていた。はたして、これからの世の中はどうなってしまうのだろうか。我々はずっと不景気の世界を彷徨い続けるのだろうか。当時、無意識であれ、このような想いを抱いて人は少なくないかと思う。
ちなみに、当時、このリーマンショックでかなり深刻なダメージを受けたのが、不動産業界だった。わかりやすく言えばレバレッジを効かせすぎてキャッシュが回らなくなる不動産会社が続出し、そして金融機関は、貸し出しを渋り始める。それは、まさに破綻の方程式のようだった。
ただ、この当時から少し後にかけて、少し不動産業界に変化が見られ始めた。たとえば、ひとつの例として、当時、私の同世代の30代前半の若者たちがこぞって不動産会社を立ち上げた。その業態は、「賃貸仲介業」である。
その当時を思い返してみると、都心のリート物件は、リーマンショックの余波を受け空室だらけ。また他のエリアも空室が目立ち始めていた。しかしそれと同時に、目立っていたのが、管理会社から仲介会社に支払われる「広告料」の増大である。
当時、私と同世代の経営者のかたは、このリーマンショック後を起点とした広告料収入の享受を最大限に受け、「賃貸仲介業」を発展させていった。(単価が100万近いみたいな世界も割と普通であった)広告料の是非の議論はさておき、そうした事業の発展が今の仲介業のサービスに影響を与えているのは間違いない。
たとえば、不動産会社のホームページで反響を獲得しポータルサイトに頼らない集客方法を確立したり、たとえば、店舗をブランディング化し、これまでとは違った仲介店舗のイメージにしたり、はたまた接客業と店舗ビジネスと割り切り、接客サービスを徹底して向上させていったり、など。これらは、その当時に生まれたサービスの一例にすぎない。
現在でも当時の時代に生まれたサービスが賃貸仲介業のサービスの土台となっていると感じる。
さて、昨今、コロナの影響で大きく不動産ビジネスは変革を迎えている。人と会うことを避けることで、オンライン接客サービスが生まれたり、またテクノロジーの発展によって、物件情報の精度は、向上をし続けている。
しかし、いっぽうで、賃貸仲介業の未来に関しては、後ろ向きな意見を聞くことも多い。あくまで客付をメインとするならば、不動産賃貸というのは、極めて不確実な要素が高いビジネスである。また、いっぽうの賃貸管理業は、これは典型的なストックビジネスであり、収益などもしっかり見込める固い商売である。(当然、そこに行き着くまでにほそれなりの管理戸数を獲得しなければならない)
そう考えると、これから消費が冷え込んでいき、景気の落ち込みが想像に容易なご時世で、賃貸仲介業を行っていくのは、多少のリスクがあるのかもしれない。
また世の中の流れとして、手数料の問題などもあったりして、手数料ビジネスとしては、逆境に立たされていると言っても言い過ぎではない。
そんなわけで、冷静に考えたらこれからの賃貸仲介業は厳しくなるのではないか、と考えることは一般的であるように感じるし、その意見に異論はない。
しかし、私はどこかそれに対してほんの少しの違和感を感じてしまう。あくまで個人的な感覚だが、もしかしたら「これから全く新しい不動産賃貸仲介のサービスが生まれる」のではないだろうか。
それは、10年程前飽和状態にあった賃貸仲介業に新たなサービスがポコポコと竹の子のように生まれたように、このような時代の転換点だからこその新しいサービスが大いに生まれる可能性があるように感じる。
勿論、それらの新しいサービスは、おそらく我々が30代だった時に生まれていったサービスとは、全く異なるものだろう。またイノベーションを生み出すプレイヤーも、従来の不動産会社ではないかもしれない。現在の不動産テック企業から生み出されるかもしれないし、全くの新規参入業者がイノベーションを起こすかもしれない。当時と今とは状況も全く異なるし、そもそも金融システムの破壊と、疫病の蔓延では、その原因も異なる。しかし両者とも時代が変革するポイントであることは間違いない。
これからユーザーの部屋探しは、大きく変化していく。当然、現在も地殻変動のように、実際の現場ではユーザーのお部屋紹介は、どんどん変わってきている。はたしてそれらのユーザーの変化を、どのようなサービスが、どのようなプレイヤーが革命を起こすのだろうか。
これからの賃貸仲介が楽しみである。
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