空室対策として、「物件で遊ぶ」という考え方

 不動産仲介業者をやっていたころ、チームのメンバーのなかで、そのメンバーのお気に入りのNo. 1物件をよく喋っていた。なにせメンバー全員、数限りなく物件を見ているメンバーである。

 面白いもので、実際、高級で高額な物件を選んだ人間は誰一人としていなかった。全員が各々に合った趣味嗜好の物件を選んでいた。
 たとえば、商店街のど真ん中にある戸建賃貸、また大学の敷地に面したワンルーム(都心でありながら大自然にいるかのような物件だった)、はたまた和モダンを徹底したデザイナーズ物件など、とにかく個人の好みが色濃く反映されたセレクトだった。

 また店舗の内装をしたとき、思い切り尖っている店舗にするため、梁を濃い木目調、片側の壁を砂壁仕様、もう一つの壁紙を地図の壁紙にした。めちゃくちゃな取り合わせだが、意外と評判が良かった気がする。

 またインテリアも拘り始めると面白い。私が見た部屋で面白かったのは、とある友人の部屋だ。そこは、さながら絵画店の倉庫ような1LDKだった。リビングには、絵という絵が壁一面飾られており、とにかくルネサンス期を彷彿させる小物を置いていた。当時はインスタなどはないので、完全に自己満足の世界だが、それでも、彼は楽しそうだった。

 不動産投資という側面での物件購入を考えた時に、どうしても堅苦しく考えがちになる。それは、当然といえば当然かもしれない。資産のポートフォリオを見直し、市場予想と打ち手を考え投資をしていく。しかも不動産投資はリスクが高いわけではないが、全くないわけではない。瑕疵があったり、また入居者が付かなかったりなど、リスクはそれなりにある。そう考えると、なかなか堅苦しく考えたくなるのかもしれない。

 しかしながら、ここでせっかく購入したのなら「物件で遊ぶ」という発想もあっては良いのではないかと感じる。
 せっかくの物件なのだから、思い切り自分の趣味を尖らせてみても良いのかもしれない。多少の改修金額は発生するかもしれないが、遊びの観点だと安く感じるかもしれない。
 
 昔はそのような尖った物件は、なかなかユーザーの目に止まらなかった。しかし今はSNSで上手く発信ができる。またユーザーの趣味嗜好は時代を経るごとに、よりカテゴライズされ深化している。そう考えると、普通に募集するよりも、もしかしたら早期の客付けになるかもしれない。

 現在、世の中の空き家は年々増え続けている。
 そのなかで、フレームワークとして様々な打ち手を考えるのも重要だが、もっとライトに気軽に「物件で遊ぶ」感覚をつくることも重要なのかもしれない。







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