FACTFULNESSS(ファクトフルネス)を使いこなし、組織検証をする。

 「大変な事態になった」

 と聞かされることは、誰しもあるだろう。特に経営やマネジメントを行うと、このような危機やトラブルは日常茶飯事である。
 しかし、冷静に考えてみる。待てよ、これは一過性のトラブルなだけかもしれない。ここ数年の数値を棚卸ししてみると、決して悲観するものではない。冷静な対応をしていけば乗り越えられる筈だ。


「彼が配属になったことで数字が下がった」
 

 と苦虫を噛み潰した発言を聞くこともある。これも冷静に考えてみると、彼の配属前からその兆候があった。ということは、彼が全ての原因だったわけではない。事実、市場はどんどん縮小している。ということは、この市場に対して冷静な対応をしなければいけない。

「日本人のモラルは低下している」

 と評論家が言っていた。本当にそうだろうか?電車に乗っても迷惑乗車は減っているし、そもそも殺人件数も年々減っている。それに最近のトラブルは、高齢者が多い。モラルの低下とは関係ないのではないだろうか?


 先日、売れに売れてる「FACTFULNESSS(ファクトフルネス)」というビジネス書を遅まきながら読了した。この本では、先進国の有識者者たちの思い込みをことごとくデータを用いて一刀両断していく。
 また貧富階層をカテゴライズして、どのようにすれば、世界中が便利に、豊かになるかを提案している。当然、読了した後は、納得感満載で、なるほど世界は我々が思っているより良くなっているのだな、という至ってシンプルな感想を抱いた。
 またそれと同時に、これは経営や組織運営にもとても当てはめることができると感じた。
 
 この本は要するにバイアスの外し方の指南書のようなものだ。人はさまざまなバイアスがかかってしまう。白か黒かとわけがちになるし、犯人探しをしたがるし、また悪いニュースにはやたらと敏感になる。
 しかし、データを検証し、そして冷静な判断を行い、それを粛々と実行していくことで、多くの問題は解決できる。
 もっと突っ込んで書くと、データ自体にも偏りがあるといけない。データ自体の取得方法はどうなのか、また現場、現実ではどのようなことが起こっているのか、それらを複合的に見て判断しなければいけない。

 以前、お手伝いしていた企業で以下のような事例があった。

 40代のデータ主義重視の現場責任者のかたがいた。彼はとにかくデータを集めたがり、現在の厳しい状況を嘆き、現場に叱咤激励していた。現場の若手メンバーは、自分たちが危機的な状況にあると、焦り、火がついたように働いていた。
 しかし、当然のことながら時間を追うごとにメンバーは疲弊していく。気がつくと、生産性は低下し、離職者が相次いだ。

 その前後に私ともう一名とで、彼のデータを基に検証を行った。データの測定方法、取り方などをヒアリングしてひとつひとつ検証を行った。
 何故、そのようなことを行なったのか。
 それは、当時の現場の感覚と彼のデータに大きな感覚の乖離が見られたからだ。
 現場としては、「うまくいっている」という感覚が強かった。もっと言えば「営業が簡単になっている、歩留まりが上がっている」という感覚だ。
 しかし、データ的には、売上こそ上がっているのものの、生産性は落ち込んでいる。
 データなのか、現場感覚なのか、どちらかに欠陥があるしか考えようがない。
 
 検証結果は、至ってシンプルなものだった。
 数式の間違いだ。
 単純だが、誰も気付かなかったことはまさにバイアスの極みかもしれない。

 今となっては笑える話だが、当時では笑えない話である。起きてしまった損害は計り知れない。
 これは、データ重視、かつ現場を見なかったことが原因のイージーミスのわかりやすい事例だ。

 ファクトフルネスでは、「複合的な判断」が必要と説いている。
 今いちど、事実を見つめ直し、データを検証し、現場をヒアリングしてみても良いのかもしれない。
 必要以上に悲観的になることもないかもしれないし、また必要以上に楽観的になる必要はない。

 是非、経営者、管理職はこの本を読んでみて欲しい。


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