コロナ後の「住まい」よりも先に、コロナ後の「仕事」を見直さなければならない

 最近、何名かのかたから「コロナ後で人々の住まいの概念」は変わって行くのか?という質問をよく受け付ける。

 たしかにこの数ヶ月で人々の仕事の仕方や、生活スタイルは大きく変わった。またそれと同時に人々の住まいに対する考えも変わったように感じる。わかりやすく言えば、リモートワークのできる環境の良い部屋がよい、とか、田舎に引っ越して仕事はリモートワークで行なうとか、またネット環境の良い部屋に引っ越そうか、など、いろいろな嗜好が生まれてきているのは間違いない。
 質問にあった「住まいの概念」のような仰々しい質問にはなんとも答えられないが、「引越しのときの部屋選び」は、ほんの少しだけ変化しているような気がする。

 実際に不動産仲介の現場でも、少しずつこのあたりの変化は生まれてきている。たとえばネット環境。これは以前に比べて格段に優先度が上がった。いくら物件の設備が抜群に良くても、ネット環境が悪いと死活問題になる。以前から、そういった傾向があったが、この数ヶ月で特にそれが加速した。
 またそれと同時に駅から遠い物件もほんの少しだけ申し込みが取れやすくなったような感覚がある。あくまで感覚的な部分だが、ほんの少しだけ、ユーザーが都心から離れていくことの抵抗感が無くなっているような気がする。

 またいっぽうで賃貸管理の現場では、騒音のクレームが増えたという声もよく聞く。やはり壁の薄いワンルームだとオンラインのミーティングの声は、聞こえてしまうのだ。また海外では家庭内のDVが増加したりなど、マイナスなポイントも増えているのは間違いない。

 さて、このようなことを総合して考えてみて、はたして冒頭にあった「住まいの概念」は大きくこれから変わっていくのだろうか。

 個人的には、ネット環境が重視されたり、構造的に防音性の高い部屋が人気になったり、以前より少し田舎の物件が人気が出る程度で、あまり大きな変化は起こらないだろうと感じる。
 急激に田舎の物件に価値が生まれたり、木造アパートに誰も住まなくなったりはしないだろう。一定数の絶対分母がある限り、強烈なパラダイムシフトは起こらないだろう。

  緊急事態宣言下でも毎朝、会社にリアル出勤しなければならない人が多くいた。

 私は、毎朝犬の散歩をしているが、それなりの数のかたがたが緊急事態宣言下でも出勤していた。また最近になって、たまに都心に向かうことがあるが、電車はかなり埋まっている状態だ。良い意味で日常が戻りつつあるが、悪い意味で言えば、「あまり人々の生活は変わっていない」。これは住まい以前に、仕事自体の問題なのだろう。

 住まいの選び方自体の大きな変化の前に、仕事のやり方や進め方を変えなければならない。そこに対して、うまく変化ができた人たちは、最適な住まいに引越していくかもしれない。しかし、なかなか仕事の仕方が変わらない場合は、「せっかく引越し」たのに。と嘆くことになるかもしれない。

 勿論、すぐには現在、勤めている仕事を変えることはできないだろう。しかし長期的なキャリアを考えて、本当にやりたい仕事と、自身のライフスタイルを見直すことで、今後の方向性を考えることはできる。自分のライフプランを見直し、そして変化をすることで、はじめて人々の住まいの嗜好も変化していくのだ。
 
 現在、急ぎでない引越しを検討しているかたは、一度、自身のキャリアをせっかくの機会なので見直してみても良いかもしれない。もしかしたら、次の住まいは全く変わったものになるのかもしれない。