このコロナショックも、ピークを過ぎようやく落ち着いてきただろうか。とはいえ、そうは言いながらも、世間では、相変わらず第二波、第三波が懸念されているのも現実だ。いずれにしても、このコロナというやつは、なかなかやっかいなウィルスであることは変わりない。
さて、そんなコロナ情勢のなかで、世の中の不動産会社の動きは、千差万別であった。往々にして、営業時間を短縮したりはしたものの、特段、全不動産会社が右へ倣え、という感じにはならなかった。企業によっては、かなり感染拡大を防ぐ対応をした企業もあったし、逆に取り敢えず営業時間短縮をして急場を凌ごうとした企業もある。おそらくどちらが正しいということは、ないのだろう。当然のことながら、不動産会社といっても、開発系の会社もあれば、賃貸店舗を運営している会社もあり、一括りにはできないのが現実だ。
またこの数ヶ月、とにかく不動産会社のプレスリリースの内容は、「オンライン接客」だらけであった。とある日は、超大手不動産会社さんが全店オンライン接客を導入したことをリリース。はたまた別の日では、とある複数店舗の不動産会社さんがオンライン紹介のサービスをリリース。という具合に若干食傷気味になるほどオンラインの部屋紹介やオンライン内見のリリースが相次いでいるような気がする。さらにそれに加えて不動産会社の「オンラインセミナー」なんかのリリースを含めると、驚くほど多数のオンライン絡みのリリース数になるのではないだろうか。
ちなみにこの「オンラインで物件が紹介」できることに対して、たくさんのメディアがクローズアップしているが、いっぽうで「そもそもユーザーは不動産店舗に行く必要がなかった」という論点に対しては、あまり議論されていないように感じる。もっと言えば、そもそも余程の理由がない限り、大半のユーザーは、不動産店舗には行きたくないのが現実であり、今回、それがいっきに顕在化したような気する。
ちなみに従来の不動産会社は、部屋の紹介をユーザーに行う際、「なるべく不動産店舗に呼ぼうとしていた」。また問い合わせの物件の「現地で待ち合わせる」ということを、極力避けたかったのが実情である。
理由としては、来店して頂いて、しっかりユーザーの状況をヒアリングしたほうが、成約率は高く、乱暴な言い方だが、効率が良い部分があった。正直、部屋を決めるか決めないかわからない、ただ物見見物、暇だから部屋でも見ようかな、というお客様のために、わざわざ電車に乗ったり、車を運転して現地に行くことは、なかなか厳しいものがある。たとえば百歩譲って戸建ての購入見込み顧客ならば、許容範囲なのかもしれないが、これが賃貸顧客だと正直辛いだろう。言いにくい部分かもしれないが、このようなことは、賃貸不動産会社さんの正直な本音である。
ということで、上記のような理由から、不動産会社さんはとにかく来店を促していた。まず、一度私と話しましょう、まず一度条件をヒアリングさせてください、という来店誘導。これは不動産店舗の運営者としては当然のところなのかもしれない。
しかし、では部屋を探すユーザーとしての本音はどうだろうか。正直、不動産店舗に行くのは面倒でしかない。自分の希望条件も自分自身でわかっているのに何故不動産店舗に行くのか、意味がわからない。もしかしたら強引な提案を受けるかもしれない。不安だ。おまけに内見したい物件は、店舗と自分の家と逆側だ。一体、来店に何の意味があるだろうか。
そのとおりである。
そもそもユーザーとしては不動産会社に行く必要はなかったのだ。
ただし、不動産会社としては、ユーザーに来てもらう必要があったのである。ここがとても重要なポイントのような気がする。
(ちなみにそれでも不動産店舗に行きたいユーザーが一定数いることも忘れてはいけない。それはむしろ、その店舗に行きたいというより、その「人」に会いたいという要素のほうが強いように感じる)
今回、オンライン紹介をおこなうサービスのリリースが相次いでいるのは、部屋探しのユーザー、もしくはそこで働くスタッフのコロナの感染を防ぐという世の中の流れに沿った当然の理由である。しかしこのような一連の流れのなかで、そもそものヒアリングをわざわざ店舗で行う必要がないことを、不動産会社自身も気付き始めたという側面もあるだろう。
賃貸仲介の営業にとって、ユーザーへのヒアリングは命である。以前はそれが「来店」という段階を踏まなければいけなかった。しかし今はこれが「オンライン」というツールでできるようになった。これはとても大きな変化であろう。
この変化が加速すると、そもそも不動産店舗にユーザーが伺う理由は無い。不動産会社としても、ヒアリングが事前にできるのならば、来店を無理に誘導する必要はない。
このようにして、時代は変化を遂げていくのかもしれない。
また今まで多くの不動産会社は、反響→来店の数値をどう上げていくかに必死になっていた。しかし今やそのような数値設定自体すらも、あまり意味がないだろう。
これからは、オンライン接客ツール、独自のオンラインヒアリング方法などが不動産店舗の差別化の基準になっていくかもしれない。
今はどこの企業も横一線の状況だ。これからまた新たな面白いサービスが生まれていくのを想像すると、なかなか楽しみである。
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