これまで企業における経営戦略の概要をまとめてきたが、今回は現代における経営戦略を簡単にまとめてみたい。現代では、日々テクノロジー技術の発展を無視することはできない。また国際競争も進み、企業は国内のみならず、世界全体において熾烈な企業競争を行なっている。そのうえで、現在のトレンドを見て、時代に即した戦略を打つことが重要になる。
技術戦略(MOT)
1.イノベーションとは?
世の中の技術が進むにつれ、様々なイノベーションが社会で起こっている。このイノベーションは、大きく二つに大別される。
ひとつが「プロダクトイノベーション」、そしてもうひとつが「プロセスイノベーション」である。プロダクトイノベーションとは、製品自体にイノベーションを起こすことであり、プロセスイノベーションとは、生産工程自体にイノベーションを起こすことだ。
当然、イノベーションにもライフサイクルがあり、基本的にS字カーブを描き、イノベーションは技術成果を向上させていく。不確実な状態から拡大状態にはいり、そして成熟した状態になるのがイノベーションのライフサイクルだ。
しかしながら、圧倒的な新技術などはこのライフサイクルには当てはまらない。S字カーブのような連続状態ではなく、不連続性、極めて突発的に生まれることが新技術のイノベーションであることも忘れてはならない。
またイノベーションの種類には2つのパターンがある。ひとつは持続的イノベーション。インクリメンタル、つまり製品を改良することで新たなイノベーションを生み出すことが持続的イノベーションである。またそれと対をなすのが、ラディカル(破壊的)なイノベーションだ。こちらは、全く新しい価値観を市場に提供する。新顧客層を取り込み、市場全体で大きなイノベーションを生み出す。
ちなみにこのような破壊的イノベーションは、リーダー企業からは生まれにくいと言われている。リーダー企業は既存顧客に対してのサービスに注力を注ぐがゆえに、既存の市場を壊す破壊的な新しいサービスを生み出すイノベーションからは避けたくなることが、特徴的である。[イノベーションのジレンマ〕
2.製品アーキテクチャ
製品構造において、現代のプロダクトには、2つの種類がある。ひとつが、インテグラル型といわれる製品だ。これは車のようにそれぞれのパーツを組み合わせて完成するプロダクトである。インテリル型は、全体を最適化することが、可能となり、なかなか他社には真似できないものである。しかしながら、このインテグラル型はなかなか進化に時間がかかってしまい、各パーツを調整していくコストも膨大になってしまうことが難点だ。
また製品アーキテクチャのもうひとつの種類として、モジュール型があげられる。インターフェースを開発し、それに合うプロダクトをはめ込んでいく。わかりやすくいえば、パソコンなどはその最たる例だろう。モジュール型は、多様な組み合わせを生むことができ、また無駄な調整コストを省くことができる。このモジュール型でイノベーションを起こすと、業界のデファクトスタンダードになる可能性が高くなり、業界標準として市場を大きく占有することができる。当然、そのためには、自社のみでなく、他社も利用するネットワーク外部性を駆使することが重要だ。
3.ベンチャー企業
ベンチャー企業の成長過程には、シード期→スタートアップ期→急成長期→安定成長期という4段階の成長過程がある。この過程をうまく通過していくことでベンチャー企業は大きく発展していくが、全ての企業がそうなるわけでない。ベンチャー企業の生存率はとても低く、彼らは、魔の川、死の谷、ダーウィンの海という課題を超えていかなければならない。
提携戦略
現代においては、様々な企業との提携が必要不可欠になる。単純に業務提携を結ぶだけではなく、いかに外部との提携を戦略的に進めるかが企業の成長において重要になる。
ここではおもな提携戦略方法をいくつか紹介してみたい。
1.ネットワーク戦略
企業間でネットワークを作り、相互に協力していく戦略。それぞれのリソースを保管し合うことができるが、提携関係としては弱い状態だ。
2.戦略的提携
もう少し踏み込んだ提携方法だと、合弁会社設立、共同研究、クロスライセンシングなどが挙げられる。
昨今ではこの共同研究において、大学などと連携して研究を進める企業も増えてきた(産学連携)またこれにより、大学発のベンチャー企業も誕生することが可能になっている。
またクロスライセンシングとは、特許などの特殊技術などを相互に提供する方法だ。クロスライセンシングを行うことで、それぞれの強みを活かすことが可能となる。(いっぽうでライセンシングを与えられたことで開発の幅を狭めてしまうというデメリットがあることも忘れてはならない)
3.プラットフォームビジネス
現在のAmazonのような大企業は、プラットフォームを提供し、そこに企業が参画することで大きな収益を生み出している。これは現在隆盛を極めているが、独禁法などに抵触されるなどの指摘があり、今後法的な整備を含めて、どのように時代と適合していくかが課題だろう。
4.産業クラスター
地域の産業ネットワークを使い、競争と協力を行なっていく。共に水平的な協力、共にイノベーションを起こすことで、その地域独自のネットワークを生み出すことができる。わかりやすい例だと、シリコンバレーなどがそうである。
国際化戦略
国際化戦略を行ううえで、様々な段階がある。当然日本の企業は、国内市場の飽和が理由で輸出を行い、安価な原材料調達で輸入を行っていく。
また生産コストを下げるために海外生産を行うことも国際化戦略の重要な要素のひとつとなる。
海外生産を行う方法としては、現地法人の設立、現地企業への委託、そして合弁会社の設立などがあるが、これはどの海外で生産を行うか、そして国際化戦略をどのように設定するかが重要になる。
市場立地型投資として、海外の市場開拓を見据えて国際化を図るのか、それともあくまで生産拠点としての機能のみを追求し、海外拠点を立ち上げるのかでその戦略は大きく異なる。
単独出資で海外で事業を行うにしろ、合弁形態で事業を行うにしろ、それぞれのカントリーリスクを見据えたうえで戦略を策定しなければいけない。
CSR
昨今では、企業は、単に収益を上げるだけでなく、その社会的責任も大きく問われている。社会的責任に対して、適切な活動を行うことで、企業価値を向上させ、社会に受け入れられるようになることも重要な企業活動のひとつだ。
1.ディスクロージャー
企業は自身の企業の情報開示を積極的に行うことで、社会的責任の向上を図る。
制度的な財務諸表や有価証券報告書の開示、また投資家向けのIRの開示などを適切に行わなければならない。
2.コンプライアンス
また、法令遵守、そして企業倫理を向上させることは、企業の社会的責任の大きな一旦を担うことになる。
3.コーポレートガバナンス
また企業は、自身の活動をチェックしモニタリングするために、企業統治を適切に行わなければならない。社外取締役の設置や内部統制の強化などを行い、第三者機関からのチェック機能を増加させていくことでコーポレートガバナンスを浸透させていく必要がある。
以上のように基礎的な経営戦略策定とは別に様々な外部環境を見据えて企業は、戦略を打っていかなければいけない。
凝り固まった戦略ではなく、いかに外部の情報に敏感になり、柔軟に企業の戦略方針を決めていくかが今後はより一層重要になるだろう。
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