不動産店舗の立地選定と内装について

 この数年で不動産店舗の拡大戦略をとる企業は、本当に減ったような気がする。大手企業は、変わらず出店数を伸ばしているが、それ以外のところは、店舗拡大の戦略はあまり取っていないようだ。これはいろいろな要因があると思うが、何よりも人手不足がかなりの理由を占めているだろう。けっして反響数や来店数が減っているわけではなく、あくまで人手の問題が原因のような気がする。

 将来的には店舗自体がなくなるかもしれないが、現在でもターミナル駅に行くとたくさんの不動産店舗がある。今後は、この不動産店舗が増えることはないだろうが、来年急に全てがなくなるわけでもない。また当然ながら、地道に店舗数を伸ばしている企業もある。これはこれで素晴らしいと思う。

 私自身も一応、それなりに店舗の出店をしてきたが、不動産店舗の「繁盛する」、「しない」はなかなか予測が立てにくい。一言で言ってしまえば、その店舗の責任者によるところが相当大きい。

 しかしながら、そうは言っても、店舗の立地は重要である。いくら店長次第と言っても、何も商売の匂いが全くしないところに出店しても意味がない。
 
 人が購買をする品物には、大きく3つあるとされる。ひとつは、最寄品、もうひとつは、買回品、そしてもうひとつは、専門品だ。
 最寄品は呼んで字の如く、洗剤などの日常雑貨など。買回品とは、冷蔵庫などの家電があげられる。たとえば家電量販店などは買回品を集合させた店舗だ。そして最後の専門品を売る店舗は、時計店やスーツ屋などの専門店などがそうだ。
 この3つの商品は、それぞれ商圏が異なる。一番商圏が狭いのが、最寄品を扱う店舗。そして次に狭いのが買回品を扱う店舗。そして一番、商圏が広いのは専門品を扱う店舗だと言われている。

 はたして不動産店舗は、この3つの商品のどれを扱うだろうか。間違いなく専門品だろう。そう考えると、思いのほか、商圏は広い可能性がある。しかし不動産店舗には、専門品店舗の要素だけではないものもあり、このあたりが難しいところだ。それは土地の情報や周辺のオーナーとの関係構築などがそうで、まさにこれは不動産店舗特有のものであろう。
 そう考えると、不動産店舗の商圏は、専門品を扱う店舗と買回品を扱う店舗のちょうど真ん中あたりなのかもしれない。コンビニほど商圏は狭くなく、といって地域の電気屋よりも若干広く、それでいてスーツ屋などの専門店よりも狭い、みたいなイメージかもしれない。

 また店舗の内装に関しては、これも不動産店舗特有の対面式カウンターが設置されるが、この対面式カウンターで扱う商品は、実際のところ、「高価な商品」である。たとえばセルフサービスなどが一番単価が低く、次に側面型接客(要は服屋の販売員)、そして最後は対面式接客がそうだ。
 気軽な店舗といっても、根本的に対面式カウンターで接客する以上、それ相応のサービスや内装をしなければユーザーからの信頼はなかなか得られないかもしれない。

 また内装に関しては、重要なところは、「音」と「光」だと言われている。
 流している音楽により、顧客の心持ちは大きく変化する。流石にAMラジオを爆音で流している店舗は久しく見ないが、たまにヒットチャートを爆音で流している店舗がある。基本は、「専門店」で「対面式接客」なので、もう少し落ち着いた音楽が良いかもしれない。
 光に関しては、専門的な話になるが、照明の種類をどうするかを考えなければいけない。直接照明、間接照明、半直接照明、半間接照明など、いろいろあるが、明るさを全開にするより、ほんの少し暗くして、温かみをだすような光の配分が良いだろう。
 設計されているかたは、ご存知だが、光束のルーメンや照度のルクスなどの数値を考え、最適な光量にする必要がある。

 ポータルサイトで反響を取り、来店頂き、それなりの営業をすれば成約率は上がるかもしれない。しかし可視化できない部分でのテコ入れをしてみるのも面白いのかもしれない。
 成約率を上げるのは、何も営業力だけに限ったことではないのだ。