私は仕事上、会社の代表者や管理職のひとに多く出会うが、話の内容のほとんどがマネジメントの話になる。どのような企業でも、結局は人と人との話になる。
マネージメントの手法は人それぞれであり、いろいろな理論が生み出されているが、結局のところ、これだと定義付けされるようなマネジメント手法はない。当然のことながら、時代に応じてマネジメント手法は変化するし、部下に応じて変えなければいけないし、もっと言えばマネージャー当事者によって、最適なマネジメント手法は変わる。だからこそ、議論の余地があり、常にビジネスマンの興味を惹き続けるのが、マネジメントなのだ。
とはいえ、マネジメントをしなければならない管理職は、ハードな仕事を強いられている。ましてや、現在ではプレイングマネージャーとしての役割を与えられ、業務過多になっている人も多いようだ。
また最近の20代のかたは、管理職にはなりたくないらしい。たしかに一理あるだろう。管理職になるといっきに骨の折れる仕事が増える。部下のフォローや進捗管理、そして予算策定、幹部会議などの各種会議の出席など、頭の痛い仕事が山積みだ。
また日本の企業では、外資系と違い、管理職だからといって収入が大幅にアップされるわけではない。業務量が多くても「わりに合わない」ケースが多々ある。
しかしながら、たとえば今後のキャリアをステップアップしたいかた、またスタートアップなどで起業をされたいかたは、一度、普通の企業で管理職をすることを個人的には強く勧める。
多角的に考えても、管理職になって得られるものが、あまりにも多いためだ。
まずひとつは、管理職になると、企業全体の仕組みが理解できる。企業の基本的なルールや制度を体に染み込みさせるには、管理職としてあらゆることを体感した方が良い。
また、管理職になると、進捗管理、予算管理などプロジェクト全体のディレクションなどを俯瞰し、実行することができる。あくまで工程のひとつの作業として働くのではなく、工程のひとつがどのように相互作用していくのかを理解できることは、キャリアで大きな差がつく。
また当然、管理職になると、マネジメント能力が身につく。いや、マネジメント能力というより、「自分に向いたマネジメント」が理解できる。マネジメントとは、試行錯誤の連続である。そのなかで自分なりのスタイルをどう見つけていくのかを理解することはとても重要だ。
そう考えると、管理職は一度はチャレンジしてみても良いかもしれない。問題はこのチャレンジの舞台から降りられなくなって、負担だけが延々と増える日本企業の構造が根本的な原因なのかもしれない。
一度、管理職に就くと、もう社内では「上がり続ける」しか選択肢はないように感じる。そうすると、このまま同じ社内で仕事をすることが億劫になる。それならば、平社員でいたほうが気楽なのは間違いない。
しかしいざ、その企業を退職しなければならない時、また次のキャリアプランを考えなければならない時、管理職経験はとても大きなメリットになる。特に起業などをした場合、社長にこのマネジメント経験がないが故に、上手くドライブできないケースは本当に多い。
そういった意味でも管理職は一度経験したほうが良い。やったことがないよりも、やったことがあるほうが説得力がある。そのうえで「やらない」という選択肢を設けても良いのかもしれない。
実際に手に触れてみることで、初めて見える世界も多くあるのだから。
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