不動産テックのカオスマップがあるように、今や不動産業界に関わらない人でも、不動産テックという言葉は聞きなじみのある言葉になった。たとえば経済ニュースを見ても、不動産テックの記事は多い。しかしながら、テック系といっても本当にいろいろな種類のサービスがある。査定系のサービスもあれば、IOT系のサービスなどもある。不動産業は、不動産売買仲介、賃貸仲介、そして賃貸管理からデベロッパー系など業種も多岐にわたっているので、サービスもそれに比例して多岐にわたる。
今回は、賃貸仲介業の業務に絞って不動産テックを考えてみる。
またそれと同時に、アウトソーシングに対する考え方もこの近年で大きく変わった。これは不動産業界だけではなく、どの業界にも言えることだが、人手不足により、様々な業務内容がアウトソーシング化されている。これもひとつの時代の大きな波だろう。このあたりも賃貸仲介業に限って考えてみたい。
1.物だし
広義で考えてみた場合、不動産賃貸仲介業のなかには、オーナー獲得などの業務も含まれるが、今回はそれを省いて、物だしからの業務を考えてみる。物だし自体を自動化することは、かなりハードルが高い。何よりもどう反響を獲得するかは、なかなかロジック化できないポイントだからだ。しかしながら、しっかりとしたロジックを組んでしまえば、アウトソース化は可能になる。エリアや条件を確定し、日時で新着物件をピックしていく。また獲得した反響の分析やPV数などをチェックして、希望条件を更新していく。物だしの定義づけは、人に起因するが、その見つける作業は、誰でもできる。指示を明確にすることが前提ではあるが。
2.入力、更新業務
これはもう多くの企業で実施されている。入力や更新業務などを自動化やアウトソース化することで多くの工数が削減できる。更新や入力は、かなり仲介会社のなかでも時間が割かれる要素が多い。このような業務が無くなるだけで、相当数の時間を削減できる。コストが大きいがRPAのようなもので対応することもできるし、アウトソーシングすることも可能だ。
3.返信、追客
こちらも現在は自動返信や自動マッチングなどの機能のサービスが多くリリースされている。現在は、LINEなどのSNSサービスにこれらの自動応対システムを組み込んでいるケースが多い。とはいえ、あくまで感覚的なところだが、現在は自動化のみではなく、どうしても営業メンバーとの会話や応対、もしくはそれに付随する要素があったほうが成約率が高いような気がする。顧客に寄るところが大きいが、両方併用していくのが良いのかもしれない。
4.接客、案内
来店して頂いて接客する場合、さすがに熟練のスタッフのほうが良い。しかしながら現地待ち合わせなどだと、アウトソーシングできなくもない。とはいえ、条件のハードルの高いユーザーだと、どうしても経験者に頼ってしまう。このあたりは、完全に自動化、アウトソーシングに振り切るのは、やはり難しい。もし自動化、アウトソースに振り切るのであれば、思い切った舵取りと社内改革が必要になるような気がする。
ちなみにスマートロックなどの内見システムは、確実に主流になるだろう。それがスマートロックであれなんであれ、「鍵取り」などは、本当に仲介会社にとって時間を取られるので、早く全ての物件が現地対応になれば良い。
5.申込→契約
申込、契約などは、今後様々なサービスが生まれていくだろう。現在もファックスではなく、ウェブでの申込、またチャット機能を使った管理会社とのやり取りなど、少しずつ新規のサービスがリリースされている。しかしながら、不動産会社自体、また管理会社自体も、先進的な企業ばかりではない。多くの不動産会社は、ファックス文化、紙文化が根付いている。なかなか全てをスタンダード化するのは難しい。
仲介の目線で言えば、申込や契約作業などはアウトソーシングをしようと思えばできる。しかしながら、営業メンバーがしっかり営業をしたうえでの申込手続きとなると、どうしても営業メンバーのフォローが必要になってくる。
現在のところ、殆んど全ての賃貸仲介業務が自動化、アウトソーシングできるようになってきた。
しかしながら、もし全てを自動化、アウトソーシングしてみたら、いろいろな懸念事項も発生するだろう。
ひとつは、コストの部分である。パッケージ化した商品を導入すれば低コストで自動化、アウトソース化は実現できるが、開発案件が発生した場合、膨大なコストが発生する。
もつひとつは、要件定義の困難さである。アウトソーシングする場合、どのように外部に委託するかで大きく結果は変わる。このあたりの要件定義は、確実に実務レベル、マネジメントレベルの高い人間が行ったほうがよい。実務がわからないまま、要件定義を行い、アウトソースをしてしまうと確実に成果は落ちてしまう。
以上のように、仲介業務の自動化やアウトソーシングは、現在ほぼ実現可能である。しかしながらそれを管理、監督、そして実務レベルに落としこむためには、やはり経験者の知見によるところが大きい。
このあたりのマネジメントをしっかり行っていく企業が今後生き残っていくのかもしれない。
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