仲介手数料がなかなか取れない時代になってきた。この数年間で、それが顕著になってきたが、最近は、仲介手数料の裁判の話やマンスリー、サブスクモデルの新興企業も増えてきて、いよいよ仲介業の収入の根幹的な問題が顕在化しつつある。
以前も書いたが、仲介業というのは、上限がある手数料ビジネスであり、価格弾力性が極めて低く、単価向上も難しい仕事である。
なかなか手数料一本勝負することは難しくなっているような気がする。
とはいえ、賃貸仲介業務すべてが無くなるかと言えばそうではない。またこの賃貸仲介という業務の領域で、まだ未開拓の領域があるといえばある。
反響から成約までの業務が一連の仲介業務の流れだが、これだけデータ化されている世界だと、全てのユーザーのトラッキングができているように思うかもしれない。しかし、不動産業界で働いている人は殆ど気付くだろうが、現在でも「来店から成約までのデータ」は、まだ整備されていない。
反響データであればポータルサイト、基幹システムの会社などで、かなり詳細のデータが取れているだろう。例えば、その物件の問い合わせをするまでのユーザーの動向は、かなり細かくトラッキングすることができる。誰がどのようにサイトを回遊し、どのようなタイミングで問い合わせを行なったのか、かなりの確度で可視化できる。
また当然、管理会社であれば、自社の管理物件の入居者の属性や、問い合わせ経路も調べることができる。管理物件が多い企業であればあるほど、多くのデータが蓄積されていく。
しかし、自社管理物件以外の顧客データは、蓄積されていない。また問い合わせしてから、内見、契約までの流れのなかで、どのようなユーザーが、どのような好みで、何件内見し、何故その物件を決めたのかを殆どの会社はトラッキングは出来ていない。
ユーザーのデータベースは、企業の宝のなかの宝だ。特に賃貸仲介会社は、このデータがとても豊富である。どのような年齢層、どのような職種の人間が、どのような物件を探すのか、そして最終的には、どの物件を契約するのか。また年収に応じての希望賃料と成約賃料の差など、これは開発系の不動産会社からしたら宝の山である。
しかし、企業数、プレイヤーが多いため、このあたりの統一的なデータがなかなか集積できない。
賃貸仲介会社のまずやるべきことは、自社の反響から成約までのデータを徹底的にデータベース化することだ。そのためには、おそらく今の受付表も見直さなければいけないし、物件台帳もしっかりと何らかのクラウドに保存していかなけばいけない。
この宝のようなデータが集積し、分析することで、たとえばユーザーの傾向を見極め、新たな集客サービスを作ることもできるし、オーナーに物件獲得の営業を行うこともできる。またユーザーの傾向に応じて、シナジー効果の高いビジネスを始めるのも良いだろう。
いずれにしても、まず自分たちのデータをしっかり蓄積することが全ての手助けになる。
「灯台下暗し」にならないようにしなければいけない。宝は意外と足元にあるものだ。
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