企業の規模が大きくなるにつれ、事業所や店舗も同時に増えていくことは良くあることだ。最近は人手不足の問題もあり、このあたりの拡大戦略に二の足を踏む企業も多くなった。しかし、それでも当然、人が増えれば場所も増えるという原則は依然根強い。
私の経験上、この複数店舗(今回は敢えて店舗と表現する)になった時点で企業のマネジメントは以前のものから大きく異なっていく。
まずひとつの拠点から複数の拠点に変わった時、これだけでフェーズが変わる。そしてそれが3つになり、5つになり、10にもなると、企業マネジメントは当初のものでは全く通用しなくなる。これは、各フェーズによるのだろうが、この拡大の階段をどのように超えていくのかは、様々だ。しかしながら、なんとなくこの拡大戦略が上手くいく企業と、そうでない企業とに分かれてしまう。それが企業のポテンシャルと言われればそうかもしれないが、それだけではない、一定の法則があるように感じる。
1.戦力を分散するのではなく、集中させる。
たとえば、強い戦力の店舗から、弱い店舗、課題のある店舗に、エース級のメンバーを移動させる。しかし、そうすると、大抵の場合、両方の店舗が落ち込むことが多い。実に不思議なものだ。あくまで強い店舗は、強いままで維持していくほうが上手くいくケースが多いように感じる。
これは軍事戦略で有名な方法で、集中と分散の法則だ。主力店舗で戦力を集中し、その企業の数字を引っ張っていくことでその企業全体の数字の底上げを図ることができる。
原則は「上手くいっているときは、なるべく触らない」だ。
2.店舗ごとに定義付を行う
複数の店舗を運営する場合、色が無くなることがある。つまり店舗のカラーがなく、地味に思える店舗が出てくる。しかし、そういった店舗の寿命は短い。店舗拡大に成功している企業は、店舗独自の色を打ち立している。わかりやすい例えだと、高級路線の店舗、またサービス力が徹底して高い店舗、ターゲットが独自な店舗。のようにシンプルな定義付をそれぞれの店舗で行なっている。
ここで重要なところは、店舗の定義付を後付けでなく、先に定義付することだ。結果を見ての定義付よりも、先に予想を立てて定義付を行うことで、戦略や戦術の実行が容易になる。
3.幹部養成スクール店舗を作る
必ずしも、エースの店舗からマネージャーが生まれるわけではない。先程述べた店舗の定義から幹部養成店舗の定義付を行うことが重要だ。そこには通常の店舗とは違った運営方法を行う必要があるだろう。マネジメント研修を増やし、全体戦略の理解度を高める育成に主眼を置く。そうすることで、横展開、店舗展開のスピードを上げることができ、他社と差をつけることができる。
4.モグラ叩きになったら即座に戦略を練り直す
よくある話だが、とある優秀なマネージャーがとある店舗を上手く軌道に乗せる。そうして次の店舗に異動する。次の店舗もまた軌道に乗せることができる。しかし、そうしている間に、以前の異動前の店舗は売上が低下する。
この事象は本当に多く、よくある「モグラ叩き」の状態だ。この時にこのモグラ叩きを繰り返してしまうと、全体的に疲弊が進んでしまう。このような状態になった時、まず必要なことは、戦略の練り直しと行動管理の徹底だ。行動のトラッキング方法や計数管理を見直し、なるべく手離れができるようにする。
逆に、この行動管理の手を入れておかなければ、またモグラ叩きのループに入ってしまう。
最近は、人手不足の問題が深刻化している。どこの企業もなかなか優秀な人材を採用することに苦労しているようだ。
しかしながら、企業によっては店舗、事業所拡大していく戦略を取っている企業は多い。そのなかで、どのように限られた人数で戦っていくかは、昔のようにプロダクト重視では通用しない。そこには緻密な戦略と強い実行力が必要となるのだ。
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