20年近く不動産仲介の仕事、またその周辺の業務を行っているなかで、仲介手数料の議論は、20年前から行われている。
割引なのか、満額なのか。そして今後、手数料は全てゼロになるのか。
このような議論をする場合、当然、それぞれの事業分野、事業内容によって立ち位置が決まり、主張も異なってくる。今回は、経済の原理原則としての理屈として、この仲介手数料について考えてみたい。
まず、価格競争の視点から手数料を考えた場合、当然、「一旦、値下げをし始めたら価格破壊が始まる」。これは特段、不動産業界だけの話だけではなく、飲食業界でも、製造業界でもなんでもそうだ。手数料としての値下げの規定が業界に無い以上、競争原理からして、手数料が下がっていくのは当然である。
仲介手数料の割引、値引き、無料化は、もはや止めることができないのが現状である。地方エリアによっては、ほぼ無料がスタンダードなエリアもあるし、都心部でもそれを打ち出している企業も多い。正確にいつから割引が始まったのかわからないが、あくまで競争原理として、この手数料割引をした時点から、既にこの流れは止めることはできない。より一層加速していくのは間違いないだろう。
ちなみに、賃貸仲介会社は、仲介手数料オンリーの収入だとほぼ確実に現在は食べていけない。仲介手数料以外にも、管理会社からの広告料があり、付帯サービスの手数料があり、また管理物件を獲得した場合の毎月の管理手数料の収入がある。このように仲介手数料以外からなんらかの収入を得ない限り、生計を立てるのは難しい。それがクリアできる企業は、本当に効率良く事業をしている企業か、またはかなり強いサービス力の企業であろう。
価格の柔軟性を考えた時に、手数料の「上限が決まっている」のも、この業界のややこしい構造を生み出している原因のひとつになっている。例えば金融商材など、手数料の上限が決まっているケースもあるが、そのような商材の場合、そもそも工数が少なく、そしてプレイヤーの数もある種限定的だ。
しかし、不動産業者はとても数が多く、このなかで上限を設けてしまうと、なかなかサービスの差別化が難しくなってしまう。
そう考えると、ユーザーの声のなかで、「どこに行っても仲介会社は同じ」という声が出てしまうのは、当然といえば当然である。
ゼロからマックスまで金額設定が決まっているルールにおいては、サービスの差は生まれにくいのが現状だ。またプレイヤーの数が多いため、安い設定金額の方向に全体が向かっていくのは当然だともいえる。
では、今後はどんどん、この手数料を徹底して安くしていけば良いのか、ということなのかと言われれば、決してそうではない。手数料の値下げ、無料化をやるなら相当の持久戦を展開していかなければならない。つまり徹底的な価格破壊を起こし、業界内のリーディングカンパニーにならなければ、うまく事業は回せないだろう。コストパフォーマンスをどのようにコントロールするかは、市場のリーダーだけが可能な打ち手だ。手数料を下げれば下げるほど、単価は下がり続けるので、工数やリソースは倍になってしまう。
また値下げしないのであれば、それ相応のサービスの質を担保しなければいけない。実際、経営的には、こちらのほうが効率が良い。つまり単価を下げない。そして顧客を絞り、サービスを高める。手数料競争から一線を画した企業がこれから勝ち抜けることができるかもしれない。
そして、不動産仲介会社は別収入、別事業立ての経営戦略を練らなければいけない。
管理物件を増やし安定収入を確保するのもひとつだし、シナジー事業を行うのも良いし、今だとテックサービスを作るのも良いかもしれない。
何度も言うように、純粋な手数料だけでは事業が成り立たなくなっているため、他の受け口を取るしかないのだ。
手数料を満額で取れるだけのサービスを生みだし運営していくか、徹底した価格破壊でリーディングカンパニーを目指すのか、そしてシナジー効果の高い事業を興すのか。今、不動産仲介会社は、大きな岐路に立っている。
これからの仲介会社の役割
不動産会社のパーヘッドとは?
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