ソーシャルハブとしての不動産仲介会社の役割

 ソーシャルハブという言葉がある。もともとはマーケティング用語で、とある商品に対し誰かがアンバサダーになり各SNSで拡散していくという意味だった。しかし、現在ではこの言葉が少し変わりつつある。人物を介し、とある企業と、とある企業を結びつけたり、個人と個人を結びつける、ようは仲介人のような役割として、この言葉を使うようになった。

社会生活のなかで我々は様々な人物に出会っているが、実際のところ人脈を広げていくのはとても難しい。気がつけば同じオフィスに行き、同じ席に座り、同じ仲間と会話をしている。
組織心理学者のトニーニャ・メノンという人物が以下のような検証結果を発表した。

「ビジネスとして機能する人間関係というのは、関係性が強い人間関係より弱い人間関係のほうが機能する」

つまり、親や兄弟などよりも、自分の影響範囲が弱い人との交流を広げれば広げるほど、ビジネスの幅は広がるというところだ。
たしかに、知らない人と会ったり、関係性が弱い場所に行くのは、とても骨の折れる作業だ。しかしながら、人との出会いで自分自身が大きく変わることが多々ある。新しいアイデアやチャンスなど、とにかく本やネットの情報だけでは、思いつけるものは少ない。また新しい事業なども発展は難しい。そういった意味で、社会的な広がりを広げ続けることは、とても重要なことだと感じる。

不動産の仲介業務を行なっていると、多種多用な様々な人物も会うことができる。彼らの生活スタイルや嗜好を聞き、最適な物件を提案する。融資の審査や入居審査があるため、表面上の情報ではなく、かなりの個人情報を取得し、信頼を勝ち得なければ、なかなか成約までは結びつかない。
接客していくなかで、不動産業者は、様々な顧客の仕事の内容や悩みなどを聞いていく。
そう考えると、まさに仲介業務を行なっているエージェントは、ハブ機能としてとても最適な職業だと感じる。

昨今、不動産の業務効率化の推進が進んでいるが、今後の仲介会社、エージェントは単に物件を紹介するだけではなく、顧客の様々なハブとして機能していくことが、もしかしたら生き残るひとつなのかもしれない。
住まいだけでなく、例えば顧客の事業を手助けする人材を紹介したり、また転職を考えている人と人材募集の会社を結びつけたり、また保険や進学、様々なステージで最適な人物はコミュニティを紹介したり。

もちろん、大前提として、エージェント自身が顧客に信頼を得なければ難しいのだが、それでも、物件を紹介するだけではない、とても可能性がある仕事だと思う。