強いハートを保つには?(言語の重要性)

 何年も前になるが、とある20代中盤のかたから相談を受けたことがある。

 相談内容は、こうだ。
最近どうも仕事にヤル気がでない。ただし、そうは言っても仕事自体にやりがいがないわけではなく、たまに通勤途中に昔の学生時代を思い出し、それがなんともいえない感情を生んでいる。

この相談を聞いた後、「それはノスタルジーだね」と彼に伝えた。それを聞いた彼は、「え?なんですか、それ?」と答えた。
彼はノスタルジーという単語を知らなく、自分の感情を言語化することができなかったのである。その後、ノスタルジーという単語の意味、そしてそれがどれほど多くの、もしかしたらほとんどの人間が陥る感情であることを伝えた。その後、彼は落ち込む様子がなくなり、仕事をしていった。

我々は、生きている間にずっと思考をし続ける。 1日のなかで思考する量は、おそらく天文学的な数字になるだろう。しかしながら、人間はその感情のすべてを言語化できていない。

文化や風習によって、言語は異なり、それがさらに文化の違い、風習の違いを生み出す。言葉が変わっていくことで、その文化が影響を受け、そしてまた新しい言語が生まれる。
こうして文化に応じた独特の感情表現の単語が生まれていく。

歴史家のティファニー・ワット・スミスは、
「言葉は新しい文化的期待や考えに対応して、変化していく」
と述べている。
つまり、昔には一般的だった感情の言語が今ではなくなったり、この時代になってから発生した言語は、昔の感情にはなかったことになる。また言語は文化や地域によっても大きな影響を及ぼすので、それぞれの文化により、感情の捉え方が変わっていく。

先程述べたようなノスタルジーという単語だったり、また様々な感情を表す言葉を知り、かつ理解していることで、感情の整理が可能になる。
もっといえば「単語」もそうかもしれない。

よくマーケティングで4Pや5forceという単語が使われるが、このフレームワークを実践する以前に、この言葉自体を頭に入れておき、理解していることで、ビジネス思考が変わっていく。
また海外の言語を学習することで、多くの新しい単語を学習し、そしてそれが感情の整理に役立てるようになれば、見識そして思考法も広がっていくかもしれない。

このように様々な言語、単語を覚えることで、自分が混乱している時や、つまづいている時、そしてその際に多くの感情が生み出された時、言語は思考の整理をし、その感情への対処法が生み出すことができるのだ。

ちなみに日本ではよく使われる「甘え」という言葉。海外では対訳がないらしい。「依存症」が近いかもしれないが、本来の意味とは異なるらしい。
これも日本の独特の文化から発生した言葉のひとつのようだ。