できる営業、できない営業の違いとは?

 数日前に知人と話した会話のなかで、とある商品の話題になり、その会話がずっと記憶に残り、その会話の数日後にAmazonで購入した。
 その会話の内容とは、友人が商品を買ったことで、どれだけ日常生活が便利になったかという内容の会話だった。

 このようなことは、日常的に良く起こることだ。
 また何かの気付きやきっかけなど、ビジネスの会話によって得られることも多い。その時には、ほぼ必ずその気付きを得られた際に語ってもらった具体的な事例も伴って思い出す。

 企業のコンサルタントや過去の経験で、たくさんの営業マンを見てきた。
 数字を達成する人と達成できない人の違いはなんだろうとずっと検証をしてきたが、ひとつの結論に辿り着いてきた。

 悲しい現実だが、たとえば礼儀や礼節、マナーなどを完璧にこなしていても、それが営業数字というものに結び付くことは少ない。また、勉強熱心でその商品に対する知識がどれだけ高くても、営業数字との相関性は低い。
 では、モチベーションはどうだろうか?モチベーションが高い営業マンと低い営業マンでは数字に差が付くのは間違いないが、実を言うとそこまで圧倒的な数字の差はなかった。
 
 面白いもので、トップ営業のかたの外見的な要素はバラバラで統一性がない。イケメンの営業のかたがトップの会社もあれば、そうでないかたがトップのケースもある。
 では、性格はどうだろうか?こちらも残念ながら先に述べたように外向的や内向的な性格もあまり影響していないように思う。
 彼らの営業手法も様々で、ゴリ推し系のかたもいれば、割と理性的で冷静に商品を薦めるかたもいる。
 
  このように様々なトップ営業のかたの特徴を検証していくとほぼ共通点は無いのだが、しかしながら、そのなかでも唯一の共通点があった。

それは、「具体例を語り、その語り方が上手い」ということだ。

 ほぼどの企業のトップ営業のかた、また自分自身が出会ってきた優秀な営業のかたも、この点は共通している。

 不動産営業の場合であれば、例えば、クライアントが住むかどうか検討しているエリアに対して、実際に住んでいる人の生活スタイルや住んだことのある人の体験談などを彼らは話している。また様々な条件で悩んでいるクライアントに対しても、プッシュする商品に対して様々な具体例(たとえば広い部屋に住むことで、生活スタイルが変わったクライアントの事例)を用いて、営業していく。


 心理学的にもこの「具体例の強さ」は、実証されている。
とある被験者にひとつの物事を伝える時に統計的なデータを伝えるのと、具体例を伝えるのでは、圧倒的に具体例のほうが記憶に残りやすいとのことだ。

  文化史研究者セオドア・セルディンは会話の重要性についてこう語っている。
「会話には単なる情報のやり取り以外のものが含まれている。会話はお互いにとっての意味の発見、規範や目的についての交渉、共感や否認、困惑、理解の表現が含まれる。そこには相互性とある種の関与、すなわちリレーションシップが暗示されている」

 昨今、様々な営業研修があるが、もしかしたらその企業独自のクライアントのストーリーを貯め、それを現場に実践させていくような研修があれば面白いかもしれない。
顧客のデータベースを作りあげることもとても重要なことだが、この具体例の蓄積と共有、要はストーリーの共有が企業の全体の営業力強化になるのではないかと考えている。