【経営戦略4】企業戦略における事業再構築およびM&Aの基礎知識〜M&A〜

 企業戦略を実行するうえで、事業のドメイン設定を行い、またアンゾフの成長戦略に基づいた多角化戦略を実施する。その際にPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネージメント)のようなフレームワークを実施し、事業へのリソース最適配分を行うのだが、それと同様に企業戦略においては、「事業再構築」と「M &A戦略」という戦略も重要になる。
 ここでは、この「事業再構築」の概念と「M &A」の基礎的な知識を紹介したい。
 

 1.事業再構築
 
 リストラクチャリングの意味とは?
  リストラクチャリングという言葉のイメージは、一般的にはリストラ、解雇というイメージを持ってしまう人も多いと思うが、実際は従業員解雇はリストラクチャリングのひとつの方法でしかない。
 リストラクチャリングは正確には「事業構造の再構築」という意味である。
 たとえば、事業構造を見直すために、企業のドメインを再定義するのもリストラクチャリングだし、撤退事業を見極め、戦力を集中化させるのも立派なリストラクチャリングである。
 この定義づけを忘れ、事業再構築イコール従業員解雇、人員整理と位置付けると、悲惨な結果を招くことになる。

 

 アウトソーシングの活用

 また事業再構築を行ううえで、重要な要素としてアウトソーシングの活用が挙げられる。何度か述べたことだが、企業にとって自力の戦力をどのように活用するかは至上の命題だ。
 しかしながら当然自社のリソースは限られている。たとえば、企業戦略としてどうしても必要な場合に、このアウトソーシング(外部利用)を行い、事業継続を図ることで、無駄な人的コストを削減することができる。
 このようにアウトソーシングの大きな活用方法のひとつとして、当然かもしれないが、企業のコスト削減が理由のひとつとして挙げられる。

 またコスト削減と表裏にある理由で「経営資源の集中」もアウトソーシング化をすすめる理由のひとつである。先に述べたように経営資源には限界がある。そして戦略を実行するうえで、資源の分散は企業として避けたいところだ。そう考えた際に、優先事業の高い事業において戦略を集中する必要があり、その際に「集中させなくてもよい箇所」にアウトソーシングを行うこともひとつの戦略だ。しかしながら、なかなかこのように戦力の配分を上手く外部の力を活用しながら、実行していく企業は、日本にはまだ多くはない。

  またその他の理由としては、「外部の専門性を活用する」ことができるのもアウトソーシングの大きな利点である。ひとつの企業では、なかなか生み出しにくいノウハウや知見を、外部のプロを利用し、それを次に活用させることができる。

 なんでもかんでもアウトソーシングをする必要はないが、改めて事業再構築をする際に、外部利用を上手く活用できるかどうかは、意外と重要な要素になるのではないかと個人的には感じる。


 2.M&A戦略の基礎と基本用語


 昨今ではM&A市場も盛んになり、世の中にも一般化しつつあるが、そもそも基礎的なM&Aの戦略を理解せずに、企業統合を行おうとしても良い結果は生まれない。ここでは基礎的なM&A戦略をまとめてみる。

 統合による3つの目的

 水平結合、垂直結合、多角化
 おもにこの上記3つの理由でM&Aを実行するケースが多い。たとえば同業種の企業を買収して事業拡大を図る。もしくは自社の事業エリア(例えば関東圏)より外の企業(たとえば関西圏)を買収し、エリア拡大を図る。このあたりの統合が、「水平統合」と言われる。

 またそれと同時に「垂直統合」といわれる方法もある。これはたとえばメーカーが卸しの企業を買収したり、販売店の企業が生産側を買収したりすることで、サプライチェーンの垂直的統合を図る。

 この「横に伸ばす」、「縦に伸ばす」かの戦略の際にM&Aは非常に有効な打ち手となる。


 また同業種ではないが、シナジー効果の高い企業を買収することで企業の事業拡大を図るケースもある。これが「多角化」戦略と呼ばれる戦略だ。少し前にあったライザップの様々な事業会社の買収も多角化のひとつだが、より既存の事業と相乗効果が図れるM&Aのほうがより有効になる。


 形態

 M&Aの形態には大きく2つの形態がある、ひとつは経営権移転がないもの、またもうひとつは経営権移転があるものだ。経営権移転のないものとしては、業務提携、合弁会社の摂理。また経営権移転を伴うものでは、買収、合併などがあげられる。

 世間一般の認識だとこの経営権移転を伴うものがM&Aといわれる

 

 基礎用語

 株式交換や事業譲渡などを行うことがM&Aの一般的な手法だが、その手法のなかで用語化されている基礎的なものが以下となる。よく経済ニュースなどで話題に上がる用語なので、参考にして頂ければと思う。ひとつひとつの詳細説明はまた別の機会に。


1.M&A手法の基礎用語

  •  TOB…株式公開買い付け
  •  MBO...現経営陣による買収
  •  MBI...外部経営陣による買収
  •  LBO…企業を担保に買収資金を調達

2.買収防衛策の基礎用語

  • ポイズンピル…財政悪化による買収防衛
  • クラウンジュエル…魅力的な事業を売る(焦土作戦)
  • ゴールデンパラシュート…取締役の高額な退職金
  • ホワイトナイト…友好的買収


 このような買収防衛策はまさに戦争と同じでそれぞれ痛みを伴う。しかしながら買収防衛策を取らなければいけない局面も企業としては出てくるだろう。


 当然、M&A自体の行うことで事業の再構築のスピードは圧倒的に早くなる。しかしながら、問題は統合した後、組織文化の浸透や、企業ガバナンスなどかなり困難な壁を越えなければいけない。改めてどのような目的でM&Aを実行するのかを改めて見直してみるのも良いかもしれない。