京都音楽博覧会でNumberGirlを拝見しました。

 最後にフェス的な音楽イベントに行ったのが、およそ20年前だ。当時、20歳そこそこの私は、フジロックの初期から行っていた。しかし歳を取り、あまりライブ自体に足を運ぶことも少なくなった。音楽鑑賞自体は、現在、サブスクであらゆる音楽が聴けるので、多く視聴している。
 ライブ自体も、自身でチケットを取りライブに馳せ参じることも殆どない。まぁ40代初頭の自分からすると、平均的なものではないだろうか。
 しかしながら、20代前半の頃は、それこそお金が許す限り、いろいろなライブに行っていた。ミッシェルガンエレファントのブレイク前の学園祭に行ったり、ブランキージェットシティのライブハウスツアーに行ったり、ナインチネイルズの大阪城ホールに行ったり、冒頭に述べたようにフジロックに行ったりしていた。

 当時聴いていた音楽でも、number girlは、かなり異質であり、衝動的であり、そして当然カッコよかった。なんというか、当時ではパンク、パブロックの日本版進化系のミッシェルガンエレファントがいたり、ネオロカベリー、ニューウェーブの日本版進化系のブランキージェットシティが活躍していたが、80年代後半のオルタナティヴパンク、80年代前半のニューヨークパンクの進化系のバンドがいなかった。だからこそ、number girlの登場に我々は熱狂した。

 そんな彼らが復活するのをニュースで見て、やはり嬉しかった。いや、むしろ、それよりもあの当時の狂騒の演奏を思い出し、心が震えた。
 そんな時に、友人から京都音楽博覧会の参加のお誘いを受け、数十年ぶりにフェス的なミュージックインベントに参加することになった。

 開場から入場まで時間がかかること。便所に並んばなければいけないこと。雨が降ったらカッパを着込んで耐えなければいけないこと。フードひとつを買うのでも、並ばないといけないこと。そんなあるあるをひとつひとつ思い出した。
 京都音楽博覧会は、かなり良い意味でユルいフェスである。お子様連れも多く、ピースフルな空気が会場に充満している。それでもやはりフェスはフェスである。

 以前、ニュースで拝見したのだが、number girlは、北海道で行われるライジングサンで復活する予定だったらしい。しかし台風により、イベントが中止となり、出演できなかったようだ。
 今回も因果なことに、京都に台風が近づいていた。しかし、かなりずぶ濡れになることを覚悟して、イベントに参加したのだが、幸いなことに雨はnumber girlの登場までいっさい降らなかった。
 
 だが、彼らの登場する直前に雨がポツポツ。そして出演時間になると土砂降りになった。
 
 土砂降りのなかで数十年ぶりに聞いた彼らの音楽は、本当にこの過酷な天候にぴったりだった。まるで大粒の雨がひとつの演出みたいだ。絶妙なバンドアンサル。独特なMC。ぴょんぴょん飛び跳ねギターを弾く田淵さん。全てが懐かしい。しかし懐かしさよりも、空気をぶった切るような音楽に心が躍る。

  20代当時の自分は、自分自身の将来の重苦しい不安な空気感がイヤで仕方なかった。だからこそ、その重苦しい空気をぶった切るようなロックミュージックを貪るように聞いていた。

 大雨の中、number girlが迫真の演奏をする。

重苦しい空気が弾け飛んでいく。それは20代の重苦しい空気ではない、40代手前の倦怠感も含んだ気だるい空気感だ。その空気感をぶった切るような彼らの演奏が続く。

 すべての演奏が終了した時、雨は止み、少しだけ晴れ間が見えた。
 
  最高でした。

  復活おめでとうございます。