「ポツンと一軒家」に見るこれからの地方

 普段からテレビは見るほうだが、特段気に入った番組は最近はなかった。しかしこの数週間、高視聴率で話題の「ポツンと一軒家」にハマっている。有難いことにAmazon primeでも配信されていて、いっき見することもできて、かなり嬉しい。

 番組の内容は知っている人も多いと思うが、衛星写真から山林などにポツンと独立して建っている建物を調査するもの。

 調査していくなかで、田舎の人との交流を描き、また実際そこに住んでいる人のインタビューを行う。ぶっつけの取材のため、空振りすることもあるし、建物自体に辿り着くことができないケースもあるが、それはそれでは何らかのイベントがあり、見る人を飽きさせない。

 しかし、当たり前だが、これ放送し続けるの、大変だろうなと思う。どこまで続くのかはわからないが、なるべくコンセプトを変えず、長く続いてほしい。

 個人的には不動産関係の仕事をしているので、どうしても不動産観点でこの番組を見てしまう。

 まず感じられるのは、限界集落の多さだ。ポツンと一軒家で本人が能動的に生活するケースが多いが、受動的に時代の波により、超限界集落に陥ってしまうケースも見られた。9件の集落が気付けば、1件のみになってしまうこと。こういったケースは今後も増え続けるだろう。まさに集落の消滅を目の当たりにする機会が増えるに違いない。

 また当然、気付かされるのは、地方集落の高齢者の多さだ。この番組を見ていると、60代の人が相当若く感じる。ポツンと1軒家で暮らす人々はほとんどが70歳以上だ。また集落での聞き込みでも殆ど老人のかたしか登場しない。日本の集落は、本当に若者が居なくなってしまっている。10年後、20年後を想像すると、日本の地方(集落)は大変なことになるのではないかと感じる。

 では、そういった御老人たちが悲壮感を持って生きているのかと言われればそうではない。
 テレビの演出もあるだろうが、出演されたかたは、むしろ、生き生きと地域のなかで助け合って生きている。また、ポツンと一軒家に住む人たちも、自分たちの幸せの価値観をしっかり持って楽しそうに生きている。少なくても、都心の電車内やオフィス街で見られる人々の悲壮感は漂ってこない。

 またポツンと一軒家に住んでいる人たちに共通しているのは、DIYを楽しんでいることだ。嬉々として自分の作った建物や浴室や、水のろ過装置などを紹介する生活の大変さもあるだろうが、この手作りによる幸福感は、その大変さを凌駕している(でないと、ポツンと一軒家に住む理由もないだろうが)

 都心のリノベやリフォームだと、様々な制限があるし、マンションなら尚のこと、管理組合の届け出などいろいろあるが、ポツンと一軒家では、そのようなルールはない。限度はあるだろうが、かなり好き勝手に家をいじくり倒すことができる。
  このような場面や話は視聴する側すると、とても魅力的に映る。まさにDIYの真髄だろう。

 今後も日本の地方では、こういった一軒家や消滅する集落が増え続けるだろう。
 しかしながら、このような情報は、まだまだデータベース化はされていない。あくまで意識的に空き家バンクなどに登録しない限り、なかなか顕在化できていないのが実情だ。
 
 ただ、意外と、このような番組から端を発して、地方の一軒家の移住が進むかもしれない。しかしながら、統一的な情報がないが故に移住したくてもできなく二の足を踏む人も多いだろう。

 非常にハードルの高い問題だが、日本は地方に対して大きな課題に直面している。
 
 解決策はひとつでははいが、不動産データベース化がされると、社会構造は大きく変わるかもしれない。
 データベースを基に、テレワークで仕事ができ、大工が好きな人たちが物件購入を検討する。それが一般的になる時代は、近いだろう。


 そんなことをポツンと都心の喫茶店で考え続けている。