宅建がないと仕事がなくなる時代が来るかもしれない

  数年前に宅建という資格は必要か否かというディスカッションを複数名のかたとしたことがある。
 いろいろ議論を進むうえで、不動産業を行ううえでは必要ないのではないか?もしくは役に立たないのではないか?という流れになったが、ここ最近は宅建免許の重要性を改めて認識するようになった。
 

 宅建自体は、言うまでもなく不動産取引の注意点をおさえ、安全に契約を行うための資格だ。ここには当たり前だが、どのように集客を図るのか、そしてどのように売上を上げて利益を出すのか、みたいなことを勉強するわけではまったくない。しかしながら、この資格があるかたとないかただと、少しだけ話の理解度が違うような気がする。

 このような話をすると、宅建を保有していない人には耳が痛いかもしれない。

 たとえば賃貸であれば、オーナーから物件を預かり、管理委託を受けた際、ゆくゆくは売却することを見越して提案する場合がある。実際、オーナーから売却依頼を受けた際、未取得の営業マンが売買依頼を受けるのと、有資格者の営業マンが受けるのとでは全く状況が異なる。有資格者のほうが当然、なんとなく媒介契約や、また売買契約の流れが理解しやすい(思い出しやすい)。しかしそうではない場合、なかなかそれらの知識をゼロから身につけるに時間がかかったりする。

 また、今後新築の供給を抑え、中古住宅の流通が活発になった場合、中古物件の売却は、かなり宅建知識が必要になる。特に物件調査、役所確認などは、宅建の知識をフルに使うことになる。また、売却云々に関しても建築不可物件の見方や、また土地仕入れの際に建ぺい率、容積率を見れるか否は必須の問題になる。

 前述したようにこれから不動産取引が中古にシフトしていくと、より専門性が高まる時代になるかもしれない。AIで仮に最適な住宅情報がわかるようになり、またどこかのサイトで適切な査定金額がわかるようになったとしても、それを基にユーザーの状況をヒアリングし、物件調査をし、ローン付けをし、契約を段取りするのは、まだまだ人の手が必要だ。そうなった時に、宅建で身につけることができる不動産取引の知識は当然必要になる。

 また仮に賃貸仲介業のみで業務を行うにしても、地の利(都市計画)や売買取引をわかっているのと、無いのとでは言葉の厚みに差が出る。また管理業は言わずもがなで、前述したように、ただ物件管理だけを受けるのと、オーナーと売却を含めた今後の将来の話をするのとでは大きな差がでる。
 
 さらに言えば、ここ最近は他業種から不動産業界に参入するケースが多い。特に業務支援系のサービスは次から次にいろんなプレイヤーが参入している。
 しかしながら、面白いほど不動産業務についての知識がないプレイヤーが多い。実際のところ、現在、業務支援系のサービスで成功している企業は、経営者がもともと不動産の営業をしていたケースが多いことを忘れてはいけない。
 仮に不動産業務がわからない人が何かの商材を開発する場合、少なくとも宅建の勉強はしたほうが良いだろう。そこには意外といろいろなヒントがあるかもしれない。さすがに全くの無知でサービス設計するわけにはいかない。

 以上のように宅建自体がまったく無意味なわけではなく、この知識をどのように活用するかが重要だと考える。


 宅建を保有している人間が仕事ができるわけではない。
 しかし宅建がない仕事ができる人間が、宅建を取ると、もっと仕事ができるようになる。
 
 来るべき時期に備えて、専門知識の勉強と資格取得はしておいた方が良いだろう。
 

南総合研究所

株式会社 南総合研究所