隣の芝生は青く見えるが、自分の庭にも沢山の宝がある。

 最近は新規事業やスタートアップはかなり気楽にできるようになっている。どちらかといえば、乱立しているといっても良いかもしれない。
 しかしながら、それが悪いわけではなく、個人的には良いことのような気がする。資金調達も気軽にできるし、またメンバーも業務委託などで簡単に募ることができる。

 とはいえ、では、このようなスタートアップの企業が成功するかといえば決してその確率は高くない。成功させることは、至難のわざだろう。
 このあたりの理由は、いろいろあると思うが、個人的に考えたことを纏めてみたい。

 まず、多いのが、実行の部分でのコミットやアクションプランなどが弱いことがひとつの理由になっている。計画性が高いもの、また「見せ方」が上手い事業プランはたくさんある。そして、それを基に事業資金を調達する。
 しかしながら、実行部分になると、いきなりフィジカルな運営が必要になるケースが多い。資金だけではどうにもならない部分が出てしまい、ある種の「行動量」や「コネクション」が必要になる。その際に、どうしても実行部分のコミットが弱い組織は、計画が立ち消えになるケースが多い。

 また、これもよくあるのが、業界の慣習が障壁になるケースだ。
 事業計画が完璧だとしても、細部の業界知識や慣習などが、事業を進めることができないボトルネックになることも多い。これは、業界内の常識的な部分、暗黙的な部分を理解してないが故に出てくる問題だ。

 勿論、そのようなルールを無視し、新規のサービスを仕掛けることが悪いと言っているわけではない。あくまで確率論のところだ。
 業界の常識を壊すために、天才的な発想と行動で壊していくよりも、まず一般概念を学んでそこを突いていったほうが良い。
 しかし、なかなかそこまで細かく先回りすることができない。それが故に、簡単なところで躓くケースが多い。

 コンサルタントを行なっていると、よくある依頼が新規事業の立案の補助だ。
 新規事業を興したいというミーティングを行うと、どうしても上記の2点を無視しがちになってしまう。

 仮に優秀な計画があったとしても誰がどのように実行していくのか、が不明瞭になっている部分と、よく自分のよく知らない業界で新規事業を仕掛けようとするパターンが多い。

 しかしながら、一番成功する新規事業は、既存の事業に近いものだ。シナジー効果を図り、リソースの担保ができ、またゲームのルールを知っていれば勝つ見込みを上げることができる。

 もし新規事業をお考えのかたは、まず足元の事業内容や近くのリソースを徹底して検証してみるのもひとつなのかもしれない。

 隣の芝生が青く見えるのは、致し方ないことかもしれないが。