朝の起床時間から夜の就寝時間まで、全く同じ人と会話をし続けていくと、どうなるだろうか?おそらく人生の楽しみは、かなり限定的になるかもしれない。またもしかしたら退屈な時間が増えるかもしれない。
とある会社の代表者で、とても気さくな方がいた。彼は、出会う方ととりあえず仲良くなり、いろいろな仕事に繋げていた。要はとにかく社交的で、またビジネススキルも高く、非の打ち所がないように見えた。
しかし、実際の彼は、数年前まで、相当な引っ込み事案だったらしい。
当時、エンジニアだった彼は、とにかく人とコミュニケーションを取るのが苦手だった。
数年前まで雇われの身だった彼は、会社から案件をもらい、それを予定通りこなしていく毎日だった。とはいえ、やはり仕事を進めていくと、都合上、様々な人とコミュニケーションを取らなければいけない。上司であれ、取引先であれ、現在の進捗状況であれ、変更点であれ、会話をしない限りは、前に進まない。
彼はとにかくそれが億劫で、会社を辞め、フリーランスとして生きていくことにした。
彼のエンジニアの腕は確かなものがあり、当面はクラウドソーシングで仕事の案件は取ることができる。しばらく、家族を食べさせるのは、これで充分だと思っていた。
当初の1年は、それで全く事欠くことなく、仕事ができていたが、ちょうど1年が過ぎるころ、彼の仕事の案件は先細りを始めた。報酬水準を下げてみても、どうにも案件自体が来ない。またやりがい自体も少しずつ無くなっていった。
そんな時、彼はひとりの老人と会った。たまたま妻に頼まれてマンションの管理組合の会合に参加した時だった。
その老人は、70歳に近いのだが、とにかく社交的で活発に活動していた。その老人はいくつかのかなり大きな企業の顧問になり、週の半分は仕事をし、残りの半分は地域活動を行なっていた。
その老人と彼が、管理組合の会合で話していた時のことである。
彼は老人に相談した。おそらくそこまで深い関係でもないからが故に気軽に相談できたのだろう。自分の仕事のこと、また人付き合いのことなど。
老人は、こう言った。
「私は幸か不幸か、人付き合いでしか、仕事をしていない。この歳になって、はっきりわかることがある。どれだけの人間に会うことができるのか、で人生の豊かさは決まる。そしてそれには向こう側からではなく、こちら側から参加していかないといけない。
呆れるほど人生は、短い。1人でも多くの人に出会った方が良い。騙すやつなんて、殆どいないよ笑」
その言葉を聞いてから、彼は1日1人、必ず新しい人と会話をするようにした。
当然、最初は難しい。しかし、毎日、とにかく人と出会う、ことだけを念頭に動き続けた。その日が終わり、今日出会った人をメモしていく。1年で365人。話の合う人もいれば、いない人もいるが、とにかく人に会い続けた。
気がつくと、彼は数百人を抱える企業のトップになっていた。先進的なビジネスモデルと広いネットワークで、とある業界で注目の会社になっていた。
先日、その彼と会った時に、人と出会うことの重要性を教えてくれた。
「新しい人に出会うことは、自分自身が何者かを気付かせてくれます。また人と出会うことで、自分が何をすべきか、そして相手に何をしてやれるべきなのかを考えることができます。それは毎日の生活をとても豊かにしてくれます」
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