なぜ企業で不正行為が生まれるのか?

 スルガ銀行の融資改竄、また一連のかぼちゃ問題より、不動産投資というジャンルは懐疑的に見られるようになった。
 そもそも不動産投資というのは、あくまで投資事業である。投資というのは、多くの資産のなかで一部の投資商材に割り当ててその資産を少しずつ増やしていくことだ。株でも、不動産でもなんでも良いがそもそも資産がある程度なければそれは投資とはいわない。資産に応じた投資配分は大原則だ。少額投資も最近流行っているが、あくまで資産と投資のバランスを忘れてはいけない。
レバレッジを効かせ不動産を購入するのはどちらかといえば資産を増やす最初のステップであり、そこにきちんと自分自分自身のライフプランとファイナンシャルプランを組み込んで考えていかないといけない。
 そう考えると、そもそも20代の中盤の普通のサラリーマンが不動産を買う必要性は殆どない。不動産を所有し続け、それを時期が来た時に売り切り、大儲けしたケースなんて、プロ中のプロでもあまり当てられるものではない。
だが、こうした不動産投資の闇の問題という以前に、今回は、なぜこのような不正が行われてしまうのかを考察したい。

アメリカでは7社に1社は、企業は不正行為を働くそうだ。不正行為が行われると、その企業の信用は失われ、業績は落ち込み、それを回復するのはとても難しい。
企業はそもそも売上を伸ばし、利益を上げないといけない。アダムスミスの資本論はざっくり言うと、各々が稼げば稼ぐほど、全員が潤っていく、ということだが、どうやら最近はそれは企業に関していえば当てはまりにくいのかもしれない。
インセンティブを餌に仕事をさせると、たしかに業績は上がりやすい。人は報酬を自分の通信簿として判断する生き物だ。とても効果的に人は働いていくように見える。
では、いっぽうでインセンティブを絞り、わかりやすく言うと、全員が同じ給料なら不正は起きないのだろうか?残念ながらそこにも不正のタネは沢山ある。結局のところ、給料云々は不正行為とは相関性があまり無いのかもしれない。

経済学者のアレキサンダー・ワグナーは、「保護価値」の重要性を説いている。人は誰も見ていない環境(つまり不正行為ができる状況)になっても、ある一定の割合で不正を働かない人がいるそうだ。これは道徳感が高いということではなく、自分の「価値観を保護」するという行為らしい。その価値観がどのように生まれるのかは、まだよくわからないらしい。
保護価値の観点で考えると、採用をするにあたり同様の価値観を持つ人間を採用していくと、企業の不正行為は減らすことができるだろう。インセンティブも良いが、価値観の確認は、採用の段階でしっかりと共有していかなければいけない。

今回のスルガのケースは、過剰な売上目標と、インセンティブによる社員の歪んだ意識、そして幹部の保護価値が壊れてしまったケースだろう。以前にも書いたが、人は偉くなればなるほど、会社と同質化してしまう。

自分の保護価値を見直してみる良い機会かもしれない。