GAFAという聞きなれない単語。しかし今、この四文字の単語が世界で大きく話題になっている。先日もこのGAFAというタイトルのビジネス書の日本語訳が発売された。
GAFAとは、現在、世界を席捲している大企業の4社の頭文字を取ったものだ。
G...グーグル
A...アマゾン
F...フェイスブック
A...アップル
世界中の殆ど誰もが知っている、または使っているこの4企業は、世界にどんな影響を与えて来たのだろうか?また今後どのような影響を与えていくのであろうか?
ここでは、不動産業に与える彼らの影響を考えてみたい。
1.アマゾン
小売の概念を壊したモンスター企業。おそらく彼らが参画したら不動産業界にわかりやすく影響を与える一番の会社ではなかろうか。ご存知のように彼らは小資本、いわゆる配当を下げどんどん新規開拓を行なっている。日本での影響以上に、アメリカではかなりの購買をアマゾンに頼っている。当初、ジェフベソスは、eコマースのターゲットを本に定め世界中の本をデータベース化した。そして宣伝をレビューという形にし、一気に世界に広めた。そして本、以外にもCD、DVDに広げ、今や日用品ですら商品となっている。
彼らはそこから倉庫を抑え、物流に手を出し、送料を破格的に安くした。また、現在ではドローン事業を行い空輸、空に浮かぶ倉庫を考えている。
そして最近では、ついに実店舗にも参入してきた。そこは報道でもあったように無人店舗だ。入店したひとは、陳列棚にある商品を無造作に取り、会計をせず店をでる。しかしデータ管理により、きちんとトラッキングされているので問題ない。
何故、アマゾンが実店舗をだしたのか?それはあきらかに小売を抑えるためだ。物流を抑え、小売を抑えることで、ほとんどのチャネルを抑えることができるようになる。
2.フェイスブック
キリスト教より、国家人口より彼らのユーザーは多い。今や14億人の人間がフェイスブックを利用している。とんでもない数の個人データを彼らは握っている。また今はインスタなどの他のSNSを抑え、その外堀を埋めようとしている。彼らは、個人の動向をトラッキングし、そしてそこに最適な広告配信を行う。人々は昨日気になったこと、また自分のトレンドに応じた広告サービスを受け取ることができる。また普段会わなくなった人ともいとも簡単に繋がることができるようになった。
我々の人脈を変え、世界の見方を変え、そして強力な承認欲求を煽り続けることで、一大プラットホームを築いた。
3.アップル
カリスマ、神のように崇められる創業者、また洗練されたデザイン、革新的なプロダクト。人々はアップルの製品を手にすることで、優越感に浸れる。彼らは、一等地に店舗を構え、電化製品の店舗デザインを変えた。グッチやエルメスが行なっているブランディングをも超える大戦略を成功し、他に追随するものを大きく抜き去った。
彼らが新しいプロダクトを発表するたびに、我々は熱狂的に店舗に並び購入する。
4.グーグル
大昔の人間が教会に行き、祈りを捧げ、未知なるものに教えを請いていたように、今、我々は下を向き、スマホをいじりグーグルを検索をする。検索を行うことで、彼らは膨大なウェブサイトから最適な情報を提供する。まるで宇宙のような、神のような存在である。彼らは、神であるが故に、その法則に反したと思ったものを罰する。それは天から雷を落とすわけではない。検索ページの1ページ目から数ページまで、反則者を飛ばすだけだ。しかし、その影響はとても甚大であり、反則者は、その影響をリカバリーするのに大きな時間コストを割かざる得なくなる。
そして彼らは、スマホだけでなく、声だけでその膨大な情報ページから情報を拾い上げることができる。今やグーグルホームに語りかけるだけで、我々は未知の情報を手にすることができるようになった。
・脳、心、下半身に影響を与えるGAFA
最近発刊されたGAFAのなかで、彼ら4企業は、脳、心、下半身に影響を与え続けていると書かれている。
購買意欲の選択、また古来から続く所有の欲求をアマゾンが満たし、また心的な繋がり、人間関係の安心感をフェイスブックが与える。
またアップルが優位性を刺激し、下半身の欲求を満たすためのツールとして機能し、グーグルは衝動的な知識欲を満たす。
・GAFAの不動産業の進出は?
まずアマゾンが日本の不動産業界に進出するか否かの考察をしてみたい。
現段階ではかなり難しいだろう。何故ならまず不動産のデータベースが特殊すぎる。一応不動産登記簿を全部見れば所有者の情報は抑えられるのだが、 はたしてそれが売買なのか賃貸物件なのかわからない。ましてや、その物件を管理しているのは誰なのか、また入居者は誰なのかもわからない。
そうなると、まず完璧なデータベースを構築することができなくなる。そして情報の鮮度が悪いため、売り切れ、品切れが続出するだろう。
またここが一番大きいのだが、流通ルートを抑えることが極めて困難だろう。流通ルートといっても二つの意味がある。
ひとつは、文字通り物件の取得、広告のルートだ。実際、不動産情報は元付広告だけではなく、客付広告が多く、先程述べたように問い合わせから購入までの精度が非常に低い。
そしてもつひとつの流通ルートだが、これは購入クリックから購入完了までのルートだ。言い換えると、借りたい、もしくは買いたいという反響からの内見までのルートがアマゾンにはないため、既存のポータルサイトと大差がなくなってしまう。
では、フェイスブックはどうだろうか?あくまで個人のデータに訴求する広告を打つのがフェイスブックだが、不動産の購入機会は一生に数えるほどしかない。また借りる機会も海外に比べるととても少ない。そう考えるとと、仮に空き物件が発生した際に、その物件情報をリコメンドしていくのがとても難しくなる。要はターゲティングがとても難しいためSNS広告は意外と相関性が悪く感じる。唯一成功している不動産会社は、リノベーションやデザイナーズ、高級層にターゲットを絞った不動産会社だけだ。またフェイスブック広告で、不動産会社推し、所謂スタッフ推ししてファンを増やすという戦略もできるが、その際は、まず会社のブランディングを考え、スタッフの離職率を減らしてプッシュしていかないといけない。そう考えるとフェイスブックの不動産業界の進出方法は、おそらくエリアマーケティングにシフトチェンジしていくような進出になるかもしれない。だが、現在のフェイスブックには、住所の細かい町名まで入れる必要も義務もない。
では、グーグルはどうだろうか?正直、「もう進出している」。彼らのアルゴリズムは物件名、検索条件を左右し、不動産業者の収益にダイレクトに反映している。そして今や、グーグルマップで不動産会社が検索でき、その会社の評判を調べることができる。しかし物件データベースの統一という観点では、まだ未開拓なのも事実だ。数年前にグーグルアースという物件データベースが誕生したが、その情報精度は酷いものだった。
アップルの不動産業界の進出はおそらくないだろう。プロダクトが情報デバイスのため、彼らと不動産業界の相関性は少ない。が、勘繰って考えると、アップル仕様の住宅、ビルなどだろうか。しかし彼らの戦略はあくまで一等地の不動産に業者限られている。また当然のことながら、かなりの不動産技術とルートと資金がないと、そのような不動産は取得できない。
・これからの不動産業界の生き残りかた
このように巨大でありながら、革新的なサービスを提供し続けるGAFAは、現在のところ不動産業界にいきなり進出することはないように思う。が、いつどのように世の中がひっくり返るようなサービスが生まれるかわからない。ただ少なくても近い将来、不動産業界は大きく変わる時期が来るだろう。どのように変わるのかはまだ誰にもわからないが。
ここからは、これから生き残るであろう不動産会社はどのような会社か考察したい。
1.自社データベースの構築
物件データベースであれ、顧客データベースであれなるべく独自のデータベースを構築する必要がある。なるべく他社にはないデータベースが良い。
2.ストック型のビジネスモデル
上記と重なるが、オーナー、投資家、そしてユーザー、物件に対して、強力な関係性を築くことが重要だ。浮気な顧客に対して、世の中は呆れる程多くの情報を提供する。それに対し、価格競争で戦うのではなく、強力な信頼関係(いわゆる心)を築くことが大切だ。
3.多機能チャネル化
データベースだけではなく、店舗も大きくブランディングをしていかなければならない。もし無店舗であれば、なるべく会社のブランディングをしっかりしていかないといけない。
4.流通ルートの確保
物件取得や内見など、独自のサービス、方法を行い、他社の参入を防ぐこと。
5.人材の獲得、確保
今後、より業務は効率化されていき、人材は不要になるだろうが、多くのチャネル化を図るにあたり、優秀なエージェント、社員は必須になる。上記の1から4までの打ち手を打ったところでエージェントが育ってなければ、あっという間に情報戦、価格競争に巻き込まれるだろう。
以上のような考察を行えば、当面の凌ぎは間違いなくできるだろう。しかし、それもあくまで当面の問題、であり、また10年後には全く違った世界が生まれているかもしれない。
4騎士の脅威に備えるのは、長く続く消耗戦になるだろう。
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