一連のレオパレスの件を仲介の視点から考える。

 報道でも大きく取り上げられているレオパレスの施工不良問題。会見では、上層部が現場判断で部材を入れ替えたと言っていたが、あれだけ全国に広がっているのを見ると、明らかに本社指示で動いていたと感じてしまう。
 はたしてこの件でレオパレスの問題は一体どのように収束するのだろうか?
 まず2018年4~12月期の連結純損益は、前年同期の128億円の黒字から439億円の赤字に転落したが、それだけで終わることはできないだろう。

 今回は客付の視点からこの問題を検証してみる。
3月までの退去要請
 約8000名近くの入居者が今回引越しを要請されているが、時期は繁忙期である。いきなり引越しを要請されたとしても、まず物件が見つかるかどうかわからない。近くに同条件の物件があれば、まだスムーズかもしれないが、それでも数に限りがある。
 入居者の学校や職場から離れた場所に引越しをしなければいけないケースが多くなるのではないだろうか?
 また繁忙期は人気の部屋は、当然「取り合い」になってくる。この時期に部屋探しをすることはそれなりに労力のかかることなのだが、そのあたりの時間的なロスはどのように補填するのだろうか?

物件の選定の困難さ
 おそらく既存の賃料、エリア、築年数を考慮し、補償の基準金額を決め、そこから入居者が申請した図面、もくしは申込書と照合して、契約金を立て替えるような方法で対応していくのだろうが、これもいろいろな意味で対応が難しい。
 まず、先程も述べたように近くに物件がない場合の対応はどうするのか?距離のロス分の補填やさらにエリアを変えた際の賃料の変更などは対応が難しい。
 となると、とりあえずどんな物件でも全額補填してしまう、という方法もあるだろうが、新居の家賃の差額などを考慮すると、莫大な金額の補填になってしまう。

 このあたりは通常のリコール問題のような対応とは訳が違う。何せ不動産は同じ商品が一つもないのだ。ましてや商品は極めて限定的であるがゆえに、「引越ししてください、お金を出すので」では対応できない。
 たとえばこれが等価交換などの条件の折り合いの話であれば、まだわかりやすい。しかし今回は全国約8000名(もっと増えるかも)の対応だ。さまざまな状況に柔軟に対応することが求められるだろう。

既存の「問題のない」物件でも稼働率は下がる
 ここまで企業の信用が落ち込むと、既存のレオパレスの物件を進んで借りる人はいなくなるだろう。稼働率が下がると、サブリースの物件は家賃を不動産会社が持ち出すことになる。その数が徐々に増えていくと、真綿に首を絞められるように経営状況は逼迫していくのかもしれない。
 一般的におそらく今後進むのは、レオパレスオーナーの鞍替えである。補修できるところはしてしまい、他社に管理や客付を任せるケースが増えるのかもしれない。

新規受託は激減
 当然といえば当然だが、現在の瑕疵のある物件を補修して、入居者に引越しをさせて、終了、というわけにはいかない。
会社としては、新規受託を続けて建築の売上を取らないといけないのだろうが、このあたりの受託はおそらくボロボロの結果になるだろう。
 そうすると、
 既存物件の空室が増え、ストック収入が減少→新規受託の無さから全体の稼働率の低下。となる可能性が非常に高い。


 不動産は信用商売である。
 あれだけCMを打っていると、安心安全にユーザーが思えるのは当然といえば当然だ。 

 今回の案件でまた不動産業界に対する世の中の不信感は高まってしまった。