先日放映されたNHKスペシャル「AIに聞いてみた どうすんのよ!?ニッポン」で健康に長生きする人の特集が放送されていた。
そこで面白いデータが公表されていた。健康寿命が上位に食い込んでいる山梨県。一般的に健康寿命が上位の県は、運動を活発に行ったり、スポーツ施設などがたくさん存在しているイメージがあるが、山梨県は下位で、あまりそのような取り組みは行なっていない。
しかしながら、山梨県では県の人口1人あたりの図書館の数がトップだそうだ。また読書に対して小学校から積極的に推進しているとのこと。
また山梨県の例とは別に、様々なデータを見ても、読書という行為は非常に健康に良い意味で影響しているとのことだ。
たしかに読書をすることで、認知症の予防にもなりそうだし、さらに様々な知的好奇心が生まれ、生きる活力が湧いてきそうだ。それにしてもここまではっきりとデータで示されるケースはとても興味深い。
またこの番組とは別のところでも読書の効能の研究が発表されている。
それは、読書のなかでも、フィクションを読むことの効能についての研究だ。
エモリー大学が2003年に公表している研究結果によると、ボランティアの学生に9夜連続で小説(古代のベスビオ山噴火をテーマにした2003年のスリラー『Pompeii』)を読ませた。そして、その後に行ったMRI検査で、左の側頭葉の脳神経のつながりが増加していることが分かった。側頭葉の脳神経は、言語の受け入れの領域だ。つまり読書をすればするほど、相手の話を理解することができることを示している。
個人的にも意識的に様々な本を読むようにしているが、そのなかでも定期的にフィクションを読むようにしている。正直、大人になり、物語を腰を据えて読む機会は少ない。しかし、物語を読むことで、別の人間の人生や感情を疑似体験することができ、更に自分自身の人生を振り返ったり、思案することができる。それはある種の癒しであり、自分自身の価値観をアップデートすることができる貴重な体験だ。なかなか現代だと、例えばゲームなどの即効性の高いものに手を出しがちになるが、たまに腰を落ち着けて、物語を読むことは、自分自身を振り返るための良い機会になるかもしれない。
またここ最近、この物語を読むことについて個人的にも思うところがある。
私の仕事柄、よく人の話を聞くことが多い。企業の問題解決を探る糸口として、当たり前だが、ヒアリングしなければ何も課題の根幹は見えてこない。経営者のみならず、場合によっては、幹部、従業員に片っ端から話を聞く。とある時には、ひとつひとつの事業所に赴き、ひとりひとりの悩みや現状をヒアリングする。その際につくづく思うのが、この「聞く力」というのは、物語を読む力と相関性があるのではないか、と思うことが多いのだ。
面談などを仕事のメインにしている人は、よく感じることかもしれないが、人の話を聞くことは予想以上に疲れる作業だ。ましてや、話を聞くだけならいざ知らず、ボトルネック、いわゆる問題の原因を探ることは、脳を総動員しなければできない作業だ。
そう考えると、この物語を読み続けることは、多少のこのヒアリングの耐性みたいなものを身に付けることの手助けになっているかもしれない。人には人が作りあげた物語があり、それを再構築することは、物語を読むことと関連性が高い気がする。
いずれにしても本を読むこと、物語を読むことで、人生はより楽しくなり、自分自身に深みをもたらすことができるようだ。是非、たまには本を手に取り、物語の世界に入り込んで欲しい。
最後に私が物語の力を強く感じた受けた10冊を紹介したい。
趣味が偏っているかもしれませんが、そこはお許しください。
1.ムーン・パレス
人類がはじめて月を歩いた夏だった。父を知らず、母とも死別した僕は、唯一の血縁だった伯父を失う。彼は僕と世界を結ぶ絆だった。僕は絶望のあまり、人生を放棄しはじめた。やがて生活費も尽き、餓死寸前のところを友人に救われた。体力が回復すると、僕は奇妙な仕事を見つけた。その依頼を遂行するうちに、偶然にも僕は自らの家系の謎にたどりついた……。深い余韻が胸に残る絶品の青春小説。
2.11/22/63
小さな町の食堂、その倉庫の奥の「穴」。その先にあるのは50年以上も過去の世界、1958年9月19日。このタイムトンネルをつかえば、1963年11月22日に起きた「あの悲劇」を止められるかもしれない…ケネディ暗殺を阻止するためぼくは過去への旅に出る。世界最高のストーリーテラーが新たに放った最高傑作。
3.デイヴィッド・コパフィールド
誕生まえに父を失ったデイヴィッドは、母の再婚により冷酷な継父のため苦難の日々をおくる。寄宿学校に入れられていた彼は、母の死によってロンドンの継父の商会で小僧として働かされる。自分の将来を考え、意を決して逃げだした彼は、ドーヴァに住む大伯母の家をめざし徒歩の旅をはじめる。多くの特色ある人物を精彩に富む描写で捉えた、ディケンズの自伝的要素あふれる代表作。
4.オウエンのために祈りを
5歳児ほどの小さな身体。異星人みたいなへんてこな声。ぼくの親友オウエンは、神が遣わされた天使だった!?宿命のファウルボールによる母の死。前足を欠いたアルマジロの剥製。赤いドレスを着せられた仕立用人台。名人の域に達した二人組スラムダンク。―あらゆるできごとは偶然なのか?それとも「予兆」なのか?
5.カラマーゾフの兄弟
物欲の権化のような父フョードル・カラマーゾフの血を、それぞれ相異なりながらも色濃く引いた三人の兄弟。放蕩無頼な情熱漢ドミートリイ、冷徹な知性人イワン、敬虔な修道者で物語の主人公であるアリョーシャ。そして、フョードルの私生児と噂されるスメルジャコフ。これらの人物の交錯が作り出す愛憎の地獄図絵の中に、神と人間という根本問題を据え置いた世界文学屈指の名作。
6.わたしを離さないで
優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度…。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく―
7.砂の女
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。
8.不毛地帯
大本営参謀・壹岐正は、終戦工作に赴いた満州でソ連軍に抑留される。酷寒のシベリアで、想像を絶する飢餓と強制労働に11年にわたって耐え抜き、ついに昭和31年、帰還を果たした。その経歴に目を付けた近畿商事の社長大門の熱心な誘いに応え、第二の人生を商社マンとして歩むことを決意。地獄の抑留生活の傷も癒えぬまま、再び「商戦」という名の新たな戦いに身を投じる。
9.コインロッカー・ベイビーズ
コインロッカーを胎内としてこの世に生まれ出たキクとハシ。罪の子ふたりの心に渦まく愛と憎悪。廃墟と化した東京の上空に、華やかなステージに、そして南海の暗い海底に強烈な破壊のエネルギーがほとばしる。巨大な鰐を飼う美少女アネモネの願いは?鮮烈なイメージで織りなす近未来小説の大きな序章。
10.世界の終わりとハードボイルドワンダーランド
高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、〔世界の終り〕。老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・ワンダーランド〕。静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。
芸術的なものに触れ、自然を体験する重要性
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