物件の空き状況を確認するために、仲介会社は空室を持っている管理会社に電話をし、空室確認を行う。しかし電話をかけても、その物件担当ではない従業員が応対すると、とても時間がかかってしまう。そんな非効率を解消するために株式会社イタンジという会社が「ぶっかくん」というサービスを数年前に発表した。
これは、わかりやすくいえば自動応対オペレーション機能だ。事前に管理会社は、空室の物件を登録しておくことで、仲介会社とのやり取りの時間を削減でき、業務効率を図ることができる。
不動産業務といっても賃貸仲介業務から売買、投資、管理と多岐にわたる。
ここでは、賃貸仲介業務に絞って話を進めてみたい。
そもそもイノベーションを起こす業務改善の定義とはなんであろうか。
原理原則的に効率化イコール時間短縮である。時間を短縮してスキマ時間を増やすことで生産性を向上し、サービスを磨く。これが基本の概念だと思う。
不動産賃貸仲介業務のなかで、従業員の労働総時間を見直してみた時に、圧倒的な時間を要しているものは、
・ポータルサイト、および自社HPへの物件入力
・物件案内
の2つだ。
ひとつ目の入力業務は、今後テクノロジーの進化によりおそらくあっという間に業務効率が図れる可能性がある。(そもそも媒体に物件を掲載するという概念もなくなる可能性もある)
しかし、ふたつ目の物件の案内は、実を言うとあまり効率化されていない。
既存のサービスであれば、スマートロックなどの鍵の手配やウェブ上での内見手配などで多少の効率化は成功している。
しかし、実際に物件を車ないし電車で見に行き、周辺の環境を見て、部屋の中に入り日当たりや設備状況を見るというそもそもの行為自体は効率化できていない。
仮に土曜日にお部屋探しのユーザーを不動産業者が物件に案内するとき、対応できるのはせいぜい3組程度のユーザーが限界であろう。つまり内見の時間が足かせとなり、どうしてもユーザー対応数に限界があり、収益ビジネスとしての機会を賃貸仲介業務は失っていると感じる。
現在、VR内見のサービスが生まれ、内見自体の概念を覆そうと様々な企業が業務効率化のイノベーションを起こそうとしているが、実際20年程度不動産業務をしてきた自分からすると、やはり完璧な代替はまだ先だという認識だ。
ユーザーは物件を内見する時に、目だけで確認するわけではない。駅から距離を体感し、周辺の匂いを嗅ぎ、風を感じ、音を聞く。
視覚だけではなく、五感を駆使して物件を決定するのだ。
今後のサービスとして、五感で擬似体験できる内見サービスが生まれない限り業務の抜本的な改革は難しいのではないだろうか。
また別の側面では、「そもそも物件見なくても良い」という根本的な部屋探しの概念の変革、という選択肢も忘れてはいけない。
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